第4章 攻める狼
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1.新たな一歩
「あまり近づきすぎてはならぬ!適度に距離を取るのじゃ」
「ユキ!その調子よ。そのままの状態を―――――っあ!!」
過去に行き、ヴォルデモート邸で傷を受けたユキは順調に回復し、今、ダンブルドアや教師たちの協力を得て力の制御を行う訓練をしている。
校庭に描かれた魔法陣の中にはドラゴン程の大きさがある大きな黒いキツネの姿があった。これが、内なる力を解放したユキの姿であった。
ホグワーツの教授陣は皆それぞれに経験を積んでいる者ばかり。
だから、ユキのこの姿を見ても、初めは驚きこそしたが次第に慣れ、ユキの訓練に快く付き合ってくれていた。
ユキも、初めは自分の異形の姿を本当に受け入れてくれているのだろうか?
と半信半疑であったが、セブルスをはじめ、皆が今までと変わらずに接してくれているのを見るうちに、自分が受け入れられている実感を強めていき、今では元のように心を許していた。
「ところでユキ、この動物は何という動物なのじゃ?」
『たぶん九尾と言われる狐ですが……私のいた世界でも一般的な動物ではないのです。九尾は昔々の御伽噺に出てくるような妖怪です……』
「九尾か……儂も調べてみよう。ううむ。ユキのアニメーガスには謎が多いのう」
ユキの変身はアニメーガスと言ってもいいのか。変身した後に一般的にはありえない、力の増幅はなぜ起こるのか。九尾のことにしろ何にしろユキの変身は謎だらけであった。
しかし兎にも角にも、ユキの目標は新学期が始まるまでに力を完全に制御することである。
「手応えはどうだ?今日は上手くいっているように見えたが」
『そうだね、セブ。お陰様で日に日に良くなってきているって自分でも感じるようになってきたよ。ただ、満月になるにつれて“狩りたい”って本能が強くなってきているから油断できないけど』
「何故満月がそうさせていると分かる?」
『野生の勘ってやつかな。月を見ていると、体の中から力が湧いてくるような気がするの』
「まるで人狼だな」
『そうかもね。似たところがあると思うわ』
訓練の後に肩を並べて歩く2人。
2人の距離間は学生時代の仲が良かった頃と比べると、少し距離がある。
しかしそれは、お互い大人になり互いを異性として意識しての事であり、何か問題があっての距離感ではない。
ユキが過去から戻って以降、ふたりはとても良い関係を築けていた。
7月の終わり。ユキの訓練は順調に進んでいた。
満月が近づくにつれて力の増加を感じてはいたが、ユキは幼い頃から鍛え上げられてきた精神力で己の力を自分のコントロール下に置くことに成功していた。
今のユキはドラゴン大の大きさの狐の姿に変身しても自分の理性を失ってはいない。狐の姿のまま周囲と話すこともできるほどだ。
訓練に関わってきた教師たちは安堵に顔をほころばせ、ダンブルドアからは来年度の授業の受け持ちも引き続き許可された。
それにユキは念の為、意志の力でコントロール出来なくなった時のことを考えて魔法具を身につけることにした。
腕に光る3連チェーンに真珠があしらわれている細い金チェーンのブレスレット。これはユキが魔法の世界に来て一年目のクリスマスにクィリナスから貰った物だ。
見た目は華奢だが、このブレスレットは魔法具作りが得意なクィリナスと、ユキが力を合わせて作った自信作。
2人の家の周囲に張り巡らされた結界並、否、以上に……
と言うか、本人たちもわけが分からなくなるくらい何重にも術を施された強力な力制御ブレスレットになっていた。
これで万全、なのだけれど……
『はあぁ。ここまでしてもやっぱり不安は残るなぁ』
「意志の力に絶対はないからな。気持ちは分かる。だが、ユキ。そう思い悩むのもよくない。不安な気持ちは君の心を疲弊させ、君に悪い影響を与える」
『うーん。分かっているんだけどさぁ~』
ここはセブの自室。
セブは対面に座っていた私に気持ちを落ち着けろと言いながら杖を振り、紅茶セットを目の前に出してくれた。
彼が用意してくれた紅茶を一口啜る。
あぁ、気持ちが落ち着く……けど、流石に不安までは拭いされないかな。
せめて、まず無理だろうけど、この気持ちを共有できる人がいてくれたらいいのだけど……
そんな人いるわけないわね。と私は心の中で諦めのため息をつきながら紅茶をまた一口啜る。
お砂糖多めの甘い紅茶が私の胸を優しく慰めようとしてくれる。
これはセブの優しさの味だろうか?
などと自惚れる自分を心の中で笑いながら私は空になったカップにおかわりを注ごうと手を……
「ユキ、それは我輩のティーセットだ。尻尾で扱うな」
『ギャウっ』
嘘でした。
半獣姿の私は尻尾でポットを取ろうとして怒られてしまった。
つい自分の部屋にいる感じでやってしまった。ゴメンなさい。
「ハアァ君の自室でのだらしない生活が目に見えるようですな」
『うっ。だってこの尻尾、手みたいに動かすことができて凄く便利だから。あと、あの……そろそろ尻尾を離して頂けませんか?尻尾を掴まれると、なんかこう、感じちゃってっ。はうぅっ』
体が痙攣するようにビクビクっと震えてしまう。
どうやら尻尾は敏感な箇所らしい。むず痒さにフルフルっと体を震わせながら言うと、セブが慌てて私の尻尾を離した。うぅぅ変な感じだったよぅ。
「襲、われ、たい、のか、この、馬鹿、がッ」
『ん?なんか言ってる?』
「……いや。何でもない」
気分を落ち着けようとカップに紅茶を注いでいると(もちろん今度は手で)セブが口の中で音を出さずに何やらボソボソ言った。
聞いても教えてくれない。意地悪っ。
セブは子供の時でも大人になってもちょっと意地悪だ。
「で、お前はいつまでその格好でいる気なのだ?」
ぶーっとしながら紅茶を飲んでいるとセブが言った。
彼の瞳に映るのは、白髪で黄色い目の自分。
それから普通の耳の代わりに黒い三角形の狐の耳、そしてお尻から九本の尻尾を生やしている私の姿。
『実はね、この状態が一番便利な状態だって気がついたの。この耳だと遠くの音まで聞こえるし、と言ってもさっきみたいに声に出されなかったら分からないけど……あと、尻尾はええと……ながら仕事をする時にとっても便利で』
そう言いながらじっと私を見ているセブからそろりと視線を外す。
あ……空気が…………
『えっとね……それにこの姿は狐化までいかなくてもパワーが増幅されるので……』
しまった。また怒られるパターンに持っていってしまったようだ。
尻尾を手の代わりにするとは!と生活指導が入りそうな予感。
俯いて、怖々と視線だけ上げ、セブの様子を伺っているとゴホンと咳払い。うっ怒られる!
「ユキ」
『ひゃいっ』
反射的にビシッと姿勢を正す。
「フッ」
『え……??』
急にセブがフッと笑った。
セブの意外な反応に目を瞬いていると、
「新学期が始まったらその格好はやめておけ。保護者から説明を求めるふくろう便が届いて収集がつかなくなる。そうなれば、君も困るだろうからな」
と、セブは言った。
『う、うん。もちろん』
わけが分からぬまま頷く。
てっきり怒られると思ったのに拍子抜けだ。
私の顔を見てフッと笑ったセブはソファーに背をつけ、ゆったりとした様子で紅茶を飲みながらくつろぎ始めた。
一体何がどうなっているの??
「その姿、我輩の前ではいつでもやって構わないぞ。普段の君と違ってこの尻尾は感情を抑えられないようなのでな。見ていて面白い」
そう言われ、にやっと笑うセブの顔からバッと自分の尻尾に視線を移す。
床に垂れた九本の尾。
「笑われた訳が分からずに落ち込んでいる、と言ったところか?」
『!?』
げっ。もしかして、今までの感情ずっと尻尾の状態からダダ漏れだったってこと!?
恥ずかしい。と思った瞬間、耳が垂れてセブにクツクツ笑われてしまう。
『み、見ないで~』
「目の前にいるのだ。無理を言うな」
『~~っセブは意地悪だっ!』
叫んだ瞬間ピンと立つ尻尾。
クッと笑うセブ。
もう、やだ!この格好は絶対人前ではしないことにしよう。
私は顔を赤らめさせながら、カップの紅茶を飲み干したのだった。
***
ユキの机の上には寮別に仕分けされた手紙の山が4つ出来上がっていた。
これらはユキが学生時代、つまり過去に行った時に友人になった人からの手紙だった。
『フフ、まさかガーベラの娘がMs.パンジー・パーキンソンだったとはね』
ユキはガーベラに返事を書く手を止めクスリと笑みを零した。
過去の世界でスリザリン生として過ごしていたので、手紙の山はやはり元スリザリン寮生からだった彼らからのものが多い。
だが、他の3つの手紙の山もそれなりの高さがあった。
ユキはそれだけ学生時代に友人が多かったのだ。
リリーとジェームズの事は悔やんでも悔やみきれないけれど、彼らと過ごした学生時代はなんと楽しかったことか……
ユキは瞳を閉じて楽しかった学生時代を懐かしむ。
悪戯仕掛け人たちとの悪戯合戦。同室の子達とお菓子を食べながらの夜中のおしゃべり。セブやリリーと行ったホグズミードの思い出。
『……』
ユキは回想から戻り、羽ペンを置いて、代わりに元グリフィンドール生から来た手紙の山へと手を伸ばした。
手紙の束を持ち、差出人の名前を確認してはテーブルに置いていく。
『リーマス……』
寂しげなユキの声が静かな部屋の中に響く。
ユキはため息をついて手紙の山をテーブルの奥へと押した。
ないことは分かっていたが、何度も確認せずにはいられないリーマスからの手紙。
おこがましい願いだけど、あなたからの手紙が欲しいよ、リーマス。今、どこでなにをしているの?
リーマスとはセブやリリー、シリウスのように過去で喧嘩別れしたわけではない。じゃあ、どうして手紙をくれないのだろう?
他の友人からは手紙が来ているのに……リーマスは海外にでもいるのだろうか?
ユキは杖を振ってソファーの上に投げていた日刊預言者新聞を取り寄せた。
“魔法試験局 一昨年開講した忍術学をO.W.L.及びN.E.W.T.での試験科目に追加
闇祓いなどの必修試験科目に!”
この新聞が発行された日は他の重大ニュースがなかったようで、このニュースが新聞の一面を飾っていた。
文字の下にはユキと魔法試験局局長のグリゼンダ・マーチバンクスが握手をしている写真が載っている。
その横にはユキが影分身を出し、影分身たちがくるくると宙返りをしたりしている写真。
リーマスには影分身の術を見せたことがある。それに、忍術を使えるのは私だけだから、この新聞を見たら私だって分かると思うんだけどなぁ。
ミネルバはリーマスが住んでいる場所を知らなかったし、校長はここ数日何処かへ出かけていて不在。ユキにはリーマスの居所を探す手立てがなかったのだ。
無論、彼女が本気を出せばリーマスの居場所など探し当てられるのだろうが、過去に行っていた分、滞っていた来年度の準備を進めたり、こうして手紙への返信を書かなければならずそこまでの時間は作れていなかった。
影分身をバンバン出して仕事を手伝わせれば、夏休みの後半にはリーマス探しをしに行けるかな……?
魔法界で忍術学を教えるのはユキが初めて。手本となるものがない上に、術を教える前に『この術は闇の魔術ではないだろうか?』と気も使う。
授業準備はなかなかに大変なものだった。
ふうーっと息を吐いて私は新聞をソファーへと放り投げる。
紅茶でも入れようかと立ち上がりかけた時、窓の外から羽音がパタパタと聞こえてきた。
『いらっしゃい。今開けるね』
窓の外にいたのは真っ白なフクロウ。
タタっと窓辺に駆け寄って窓を開くと、白フクロウは部屋の中に入ってきて先程までユキが座っていた椅子の背もたれへと着地した。
『君は美男子?美人?さんだね。誰からの手紙を運んできてくれたの?』
フクロウの喉のあたりを掻きながら足から手紙を受け取る。
『あら……ハリーからだわ』
ペーパーナイフで封を切って中の手紙を読み始めるユキ。
手紙を読む彼女の瞳がゆっくりと揺れる。
そうだね……あなたにも、話さなくっちゃ……
―――不思議なことが起こったんだ!久しぶりにハグリッドが作ってくれたお父さんとお母さんのアルバムを開いたら、そこに今までいなかった子供が増えていたんだ!しかもその子の顔、ユキ先生を幼くしたような顔で……
この子ってユキ先生?もしそうだったら嬉しいし、でも僕、凄く不思議で――――
手紙を読み終え、私はハリーの手紙をそっと折りたたんだ。
そう。ハリーの言う通り、ハリーが持っているアルバムに新たに出現した子供はきっと、学生時代の私だろう。
ハリーはジェームズとリリーの子。
私の大好きだった2人の友人の子供。
『彼にも伝えなければならないね。一緒においで、名前はええと、手紙に……ヘドウィグだね。おいで』
私はヘドウィグとともに、ハリーの家へと向かうことにした。
プリベット通り4番地
『案内ありがとう、ヘドウィグ』
ミネルバにお願いしてハリーの家近くまで姿現ししてもらったユキはヘドウィグの案内で無事にハリーが住むダーズリー家に到着した。
ホウとひと鳴きしてパタパタと家の2階へと飛んでいくヘドウィグの姿を確認してニヤリと口角を上げる。
あそこがハリーの部屋かしら?
閑静な住宅街。今日は暑いので近所の住民はみんな部屋の中に閉じこもっているらしく、通りに人の姿はない。
真っ昼間ではあるが、ダーズリー家への侵入は容易そうだった。
「ママーー!もっとアイスが食べたいよぉっ」
「はいはい、ダドリーちゃん。直ぐに持って行くわね」
「ペチュニア!この番組見てみろ。面白いぞ!」
庭に侵入して窓から家の中を覗く。ハリーの姿はないみたい。
じゃあやっぱり、さっきヘドウィグが飛んでいった2階のお部屋にいるのかな?
あたりを確認して壁に沿って取り付けてあるパイプを掴み、よじよじと登っていく。
パイプをトンッと蹴って、先ほどヘドウィグが入っていった窓のサッシへと掴まり、足を1階の窓から出さないように気をつけながらそっと部屋の中を覗き見る。
いたいた。発見!
『ハリー』
「!?!?」
他の家族に気づかれないように小さな声で呼んだが、ハリーは直ぐに気がついてくれた。
どうやら夏休みの宿題をやっていたらしい。教科書を放り出してこちらへと走ってきてくれる。
「ユキ先生!?」
『シっ。下に気づかれたら困るわ。久しぶりね。手紙ありがとう。お邪魔してもいいかしら?』
「もちろんです!」
ハリーが窓から一歩離れたのを見て、腕に力を入れてぐいっと体を持ち上げ、トンと窓枠に足を乗せ、部屋の中に入る。
『お邪魔します』
「いらっしゃい、ユキ先生!」
両足が床についた瞬間ハリーがギュッと抱きついてきてくれた。
『なんだか少し見ないうちに身長伸びたんじゃない?』
「本当?」
『うん。さすが育ち盛りだね』
ポンポンと頭を撫でればハリーはくしゃりと表情を崩して笑う。
身長は大きくなっても表情にはあどけなさが残っている子供の顔。
フフ、可愛い笑顔。ただ、この話をしてからもこの表情を私に向けてくれるかは分からないけれど……
「ユキ先生、もしかして今日来てくれたのって……」
期待を込めて私を見るハリーにコクリと頷く。
『うん。アルバムのこと』
「やっぱりアルバムの子ってユキ先生だったんだ!」
キラキラと瞳を輝かせるハリー。
ハリーに自分の失敗を話すのは辛い。
胸が痛い。
だけど、話さなければね……
私は好奇心に瞳を輝かせているハリーの肩に手を置きながら、大事な話があるから落ち着いて話したい。と言って、ハリーに座るように促した。
ベッドに腰をかけたハリーの目を真っ直ぐに覗き込む。
澄んだエメラルドグリーンの瞳。
『あなたの目はリリーにそっくりね。このくせっ毛はジェームズ……』
彼の髪に手を触れようとして、止める。代わりに、私は彼の対面に立ち、壁に背をつけて口を開く。
『ハリー……あなたに謝りたいことがあるの』
「謝る?」
小さく首を傾げるハリーに頷く。
さあ、話さなければ……
『少し長い話になるけど、私の話を聞いてください―――――――
私はエメラルドグリーンの瞳を真っ直ぐに見つめ返しながら、口を開いた。
***
下の階から、やけに耳に響く明るい笑い声が聞こえてきた。
全てを話し終えた私を、リリーと同じエメラルドグリーンの瞳で真っ直ぐに見つめてくるハリー。
彼は私を許してくれないかもしれない。
これは覚悟している。
だって、私がしくじらなければ、彼の両親は今も健在だったはずなのだ。
こうしてダーズリー家に居候して肩身の狭い思いをしているのも私のせい。
リリーとジェームズはきっとハリーにとって良い母と父になっていただろうに……
両親の愛情をいっぱいに受けて成長する機会を奪ったのは私の――――――
「そんな顔しないで!」
『っ!?」
衝撃を感じて、体をビクリと跳ねさせる。
目の前にハリーの姿はない。今ハリーは、私の首に腕を回してギュッと抱きついていた。
『ハリー……?』
「ユキ先生、ご自分のせいで僕の両親が死んだって思っちゃ絶対にダメだよッ」
頭の中を覗かれたような言葉に私は驚きながら視線を下に向けた。
私の目に映るのは、意志の強いエメラルド色の瞳。
その眼差しには見覚えがあった。
「僕の両親を殺したのは、ヴォルデモートなんだ。今の話からすると、ユキ先生は僕の両親を助けるために頑張ってくれたんでしょ?だから、そんな顔しないで下さい」
私に気持ちを伝えようと、懸命にそう言ってくれるハリー。
その優しさが、私の胸を熱くする。
教え子の前で、情けないわね。
ハリーの背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。
その瞬間、ボロっと涙が目からこぼれ落ちてしまった。
『ごめん……』
「謝らないでください。ユキ先生は何も悪くなんかない。ユキ先生、お礼を言わせて……僕の両親の代わりに。きっと両親もユキ先生にありがとうって伝えたいって思ってる」
ハリーは優しい子だ。
優しいリリーの子供だ。
涙を見られないようにさっと目元を拭き、ハリーと顔を見合わせる。
ぎゅっとハリーに手を握られた両手。
「ユキ先生、ありがとう」
大好きな親友、リリーの息子。
良い好敵手だった、ジェームズの息子。
『ハリー。私は必ず、君をヴォルデモートから守ってみせる。ヴォルデモートの思い通りになど、させはしない』
「ありがとう……ユキ先生、ありがとう」
優しい笑顔に微笑みを返す。
絶対に、絶対に
私はハリーを守り抜く
ジェームズ、リリー、見ていてちょうだい――――――――
「ユキ先生!お話聞かせてくれませんか?ユキ先生と、僕の両親の学生時代の話を聞きたいです!」
『もちろん』
ハリーに学生時代の思い出を話して聞かせるユキ。
母親とユキが仲良かった事に頬をほころばせ、
父親とユキとの悪戯の掛け合いに笑うハリー
ふたりの頭の中に、楽しい学園生活が描かれる
『……ん?誰か来る』
「っ!?大変だ。どこかに隠れてください」
『待って。この気配はもしかして・・・』
「きゃああああああっ」
バンっと突然開け放たれたドア。
家中にこだまする、ペチュニアの悲鳴。
『やっぱりペチュニアだった!あはは、久しぶり!』
「ひいぃ何で、何で、あんたがどうしてここにいるのよーーー!!」
にやりと笑うユキ
真っ青になるペチュニア
ハリーはふたりの顔を見比べながら、早く2人に関する昔話も聞きたいと、胸をワクワクさせていたのだった。