元生徒副会長は迎え入れる
静まり返る深夜、俺達は黒服を身に纏い闇に紛れる。目指す施設は塀に囲まれ、正面の門には防犯カメラが設置されている。一見、セキュリティが万全のように見えるが穴がある。
塀の手前に植えられた木。
その木に登り、監視が居ないこと確認した俺は、下に居るカルマ達へ合図を出す。全員が頷いたのを確認し、塀に飛び移り地面に降りる。
「んで、不破。なんで真犯人はこの建物を次に選ぶと?」
「ここは、某芸能プロの合宿施設。この二週間は巨乳を集めたアイドルグループが、新曲のダンスの練習をしてるって」
不破の視線の先には、洗濯した後の女性用の下着がたくさん干してある。なるほどな。悪趣味な犯人ならば、こんな都合の良い状況を逃すはずが無い。
「あ」
植え込みに隠れると、反対側にアイツの姿があった。どうやら、アイツも犯人を捕獲する為に行動しているようだ。
心なしか鼻息が荒く、興奮状態のアイツは犯人にしか見えない。
「ねえ、あっちの壁。誰か来るよ」
「え?」
カルマが指を指したのは、先程俺達が越えて来た塀の方だ。
振り向いて確認すると、黄色いヘルメットを被った男が軽い身のこなしで塀を飛び越え、下着へ距離を詰める。
「捕まえたー!!よくもナメた真似してくれましたね!!」
アイツが男を取り押さえるのと、男が下着を手に取るのは同時だった。アイツの下敷きになっている男は、逃げ出そうと必死にもがいている。
災難だな。アイツに捕まれば、簡単には逃げられないぞ。
「顔を見せなさい偽者め!!」
遂にアイツは、男が被ったヘルメットを脱がせる。ああ、やはりな。ヘルメットから晒された素顔。その人は、俺達が良く知る人物だ。
はあ、よりにもよって烏間先生の部下か。
「―――!?」
呆気に取られていると、急に物干し竿に干されていたシーツが下に降り、アイツを閉じ込める。しまった、これは罠だったのか。
「国に掛け合って、烏間先生の部下をお借りしてね。この対先生シーツの檻の中まで誘導してもらった」
「……お前は」
見覚えのある姿が、檻に向かって歩いて来る。そして、上空に飛び移る一つの影。
「さあ、殺せんせー。最後のデスマッチを始めようか」
ずっと空席のままの転校生。俺達のもう一人のクラスメイト―――堀部イトナが、檻の中に降り立った。