元生徒副会長は迎え入れる
「きょ、今日の授業は……ここまで……」
肩を落としながら教室を出て行くアイツの後ろ姿は、すっかり覇気が無くなっていた。本当にやっていないのならば、堂々と構えていればいいものを。
少なからず、信じてくれる人間は何人かいる。
「だとしたら、何故」
仮に、アイツが無実だとして考える。
犯人のこの行動は、どうも不可解な点が多い。犯人はどうしてアイツに罪を擦り付け、証拠を残してまでアレの存在を表に出そうとしたがる。
「殺せんせー、本当にやったのかな?」
「地球爆破と比べたら可愛いもんでしょ」
目的は何一つ理解出来ないが、分かったことが一つある。この犯人は、アイツの存在を知っている。つまり、アイツに関係する人間だ。
上層部の人間が。
実に、くだらないことをしてくれる。
「でもさ、あの教師馬鹿の怪物にしたら、E組おれらの信用を失うことするなんて、暗殺されんのと同じ位避けたいことだと思うけどね」
「……うん。僕もそう思う」
カルマの言葉に、柔らかな笑みを渚が浮かべた。確かにアイツは、俺達E組の教師であることに固執している。
そんな人間が、こんな裏切るような真似をするだろうか。
「でも、いったい誰が……?」
「偽よ」
両腕を組みながら、嬉々として不破が答える。まあ、行きつく正解は偽物だろう。何にしろ、こんなくだらない噂でアイツが消えられても困る。
そうなると、人手が必要だ。そう思いカルマに視線を遣ると、バチリと目が合う。
「俺らの手で、真犯人ボコって貸し作ろーじゃん?」
「貸し一つか。それは良い」
現行犯を捕縛できれば、上層部の膿を炙り出せ、アイツの無実を証明できる。正に一石二鳥。どんな奴が実行しているのかは分からない。
だが、ただで済むと思うな。
犯人がしていることは、重大な規律違反。一歩でも違えば、大事になるということを何をしてでも理解して頂く。