元生徒副会長は迎え入れる
「おい、冗談だろ?」
「ホントだって。見てよコレ」
いつも通り登校してE組の教室の扉を開けると、何かを囲むように輪が出来ていた。皆揃いも揃って、中村が持っている新聞紙を眺めて怪訝な表情を浮かべている。
俺も少し気になり、陽斗と悠馬の間から覗き込む。
一見、普通の朝刊のように見えるが。
「……とうとう、見境なく手を」
「うおぉ!?ビックリした。おはよう、司」
驚いて振り向く悠馬へ、おはようと挨拶を返し、下部に印刷された記事に目を通す。最近多発し始めた、下着泥棒。犯人は、黄色い頭の大男で、特徴的な笑いと現場に謎の粘液を残す。
そこまで読んで、俺の脳裏に一人の人物が思い浮かぶ。
「どうしたんです、皆さん?もうすぐでHRが始まりますよ」
その声を耳にした途端、全員で一斉にアイツを凝視する。コイツは確か、あまり良いとは思えない悪趣味を持っている。
頭の形状も、色もコイツ。
どこからどう見ても、犯人の特徴と一致する。
「見てみろ」
「……はい?」
教え子全員に白い目で見られる哀れな存在に、唯一の慈悲として新聞紙を見せてやる。最初は、普通に記事を読んでいたアイツだが、問題の文章を見たのか慌て出した。
「ちょ、ちょっと待って!!先生まったく身に覚えがありません!!」
「そうだな。コイツが犯人だと決めつけるのは、まだ早い」
天霧君、と目をこれでもかと言うほど輝かせるアイツを横目に、俺なりの考察を皆に説明する。まず第一に、国家機密のコイツがわざわざ痕跡を残すか?
時折、バレそうになったこともあるが、それはワザとではない。今回の一件は、余りにも証拠が残りすぎている。
「言われてみれば、確かに!」
「でもさ、アリバイも無いから分かんねーよ」
その意見も一理ある。
コイツの身の潔白を証明できるものが、何一つない。
そもそも、コイツの普段の行いのせいで疑いが拭え切れないのが一番だろう。
「せ、先生の机を見なさい!!そんなものは一切―――え?」
「……先生、それ」
引き気味に片岡が、アイツを冷めた目で睨み付ける。アイツの机から出て来たのは、一枚の女性用の下着だった。
視界に入らないように目線を逸らすと、矢田の口から嫌悪の言葉が溢れ出した。
「……不潔」
「信じらんない」