元生徒副会長は迎え入れる



「俺を合わせて、後18人か」

 あれから暫く経たない内に、原と孝太郎、そして竜馬の三人が捕まった。このままでは、三十分も経たない間に泥棒は全滅する。

 人数が減る分、集中的に狙われるのは勘弁したい。
 どうにかアイツの気を引いて、捕まった皆を解放するしかないか。


「お知らせいたします!牢屋に監獄されていた、泥棒全員が解放されました!」
「……何?」

 律の経過報告を聞いて、牢屋に向かうとしていた足が止まる。
 一体、どうやって逃げ出したんだ。機動力で勝てるとは思わないし、ましてや、気付かれること無く近づけると思えない。


 ああ、そうだ。
 捕まった中に大河が居たな。

 あの二人は、趣味が合う。大方、大河が賄賂を送って見逃してもらったのだろう。


 その後すぐ、矢田が捕まったが同じように解放された。怠け者の相棒を持って、烏間先生の心労は絶えないだろうな。

 だが、御蔭で作戦は整った。
 なるべく気配を消して、水の流れる音に向かって歩き出す。


「あ、司じゃん」
「カルマ」

 茂みを過ぎたところで、カルマに遭遇した。同じことを考えついたのは俺達の他にも居たようで、プール横で上着を脱ぐ、渚と友人が俺とカルマを見て目を瞬かせる。

 残る時間は、一分三十秒。


「俺らの勝ちだな」
「ああ」

 勝利を確信した上で、上着を脱ぎ捨てて水中に潜る。ラスト一分でアイツが動き出すが、水が弱点のアイツは水中に居る俺達に触れられない。

 そして、皆を追っている烏間先生は、裏山の奥に居るはずだ。
 果たして、そこから一分の間にここ・・まで戻ってこられるか。


「タイムアップ!!全員逮捕ならず。泥棒側の勝ち!!」


 答えは、否だ。

 水面から顔を出し、濡れた前髪を掻き上げる。プールの端で、悔し気に俺達を見るアイツが居て、俺は目を細めて笑った。


「残念だったな」
「ぐっ……悔しい!!」



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