元生徒副会長は迎え入れる
竹林side
A組の授業は、はっきり言って効率が悪かった。
教師は生徒の都合を一切考えず、ただ早口で黒板に書いては消す作業を繰り返す。付いて来れない者は完璧に置いていかれる。
今日一日、A組で過ごして分かったことがいくつかある。まず、A組のクラスメイトは勉強ができてE組ではない生徒にはごく普通に接してくれる。
けど、昔の僕みたいに常に勉強に追われている。
仲良く話していたクラスメイトは、放課後になるなり直ぐに塾へと走っていた。
「明日うちでパーティーするかい?」
「お、いいな」
教科書を纏めながら、後ろで話す五英傑の会話に耳を傾ける。どうやら彼等は明日、榊原の家でパーティーをするらしい。
こんな余裕があるのは、本当に出来る数人だけだ。
E組とはえらい違いだった。
「なっ……」
視線を感じて窓の方へ振り返ると、外の植木の影にE組の皆が居た。頭に葉を巻いてカモフラージュしているが、E組と本校舎では育つ植物が違うからバレバレだ。
なんで、まだ僕のことを知ろうとする。
E組で僕は、暗殺の役に立っていない。
本校舎ここで言えば、勉強が出来ないのと同じ。必要とする価値がない。ましてや、A組になった僕を見に来て、これ以上何を学ぶ価値がある。
――逆に、僕は何を学びに本校舎へ戻って来たんだっけ。
「どうだい、竹林君。クラスには馴染んだ?」
「……!ま、まあ」
完全に窓の外へ意識を向けていたせいか、僕は背後に居た浅野君に気が付かなかった。上擦った声で返事をしたが、彼は特に気にすることなくニコリと笑う。
僕は、この笑顔が苦手だった。
「E組の授業ペースよりも、随分と早かったんじゃないかな?慣れるまで大変だろうが、一緒に頑張ろう」
「……ありがとう、浅野君」
彼と話していると、天霧の姿が思い浮かぶ。彼と同じく天霧は秀才で、堂々とした雰囲気で無意識に人を惹きつけている。
でも、話してみると案外抜けていて、硬い表情の中に色んな感情が見えた。
「ああ、そうだ」
ああ、まただ。
感情の籠っていない笑顔を浮かべながら、浅野君が僕を見る。
浅野君の取って付けたような笑顔より、天霧のような不器用で豊かな表情の方が僕は好感が持てた。
「理事長が君を呼んでいたよ」