元生徒副会長は自覚する



 あの離島から帰ると、俺は烏間先生を同伴に病院で負傷した脹脛を診てもらった。切れた部位は浅く、そう傷は深くないそうだ。

 完治するまでは、約4~5週間掛かると言われた。
 大体、夏休みが終わるまでの間だ。


 それまで俺は、松葉杖を使用することになった。まあ、特に外出する予定も無い。大人しくしていよう。

 そう思っていた俺は、完全に油断していた。


「アイス買ってきた」
「……冷蔵庫に入れておけ」


 そう、コイツだ。カルマだ。

 ここ最近、カルマは家に来てはゲームをして時間を潰すようになった。一度、何故わざわざ俺の家に来るのか聞いたら、自分の家より涼しいからと言われた。

 つまりは、エアコン代を浮かす為という訳か。


「ね、通信対戦しよーよ。俺の貸してあげるからさ」
「何だこれは?……ああ、ポコモソか」

 カルマに渡されたゲーム機を起動させると、画面上に題名が表示された。このゲームは図鑑を完成させることが目的のゲームだと思っていたが、どうやら対戦も出来るらしい。

 軽くタイプ相性があることや、道具の効果を説明され、パーティーを作る。


 この手のゲームは好きだ。

 戦略一つで、戦況が大きく変わる。


「初めてやるって、嘘でしょ」
「俺は嘘をつかない」

 俺の残る手持ちは二体、カルマの手持ちは全員ひんし状態。俺の勝ちだ。俺に負けたカルマは、は~、と腑抜けた声を出しながらソファに寝転ぶ。


「おや、ここに居たんですか」

 何か飲み物でも淹れてきてやるか、と立ち上がろうとした瞬間、リビングの窓からアイツが侵入して来た。

 不法侵入もいいところだ。


「にゅや!?スミマセン、通報は止めてくださいいぃぃ!!」

 通報しようとスマホを持った手を、必死に止められる。本気でやるつもりは無い。国家機密の存在を、そう易々と広めたりはしない。

 そんなやり取りを見ていたカルマが、目を細めてアイツを見る。


「何しに来たの、殺せんせー?」
「よく聞いてくれました、カルマ君!E組の皆で夏祭りに行きませんか?」

 夏祭り、か。何年も前に、一度行ったきりだな。それにE組でか。楽しそうではあるが、この状態で人混みの中を歩くのは避けたい。


「……俺は、」
「いいじゃん、いこーよ。丁度さぁ、かき氷が食べたいって思ってたし」


 断るつもりだったが、カルマの顔を見て止める。

 俺も久し振りに、かき氷が食べたい。


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