元生徒副会長は自覚する
「っ、……寝すぎた」
遠くから爆発音が聞こえて目が覚める。しまった、今は何時だ。早く、皆にウイルスのことを伝えなければ。
そもそも、俺は何故布団で寝ている。
ヘリで移動していたはずだ。
「起きたか。おはよう、天霧君」
「……烏間先生」
慌てて起き上がると、椅子に腰かけていた烏間先生が書類を下して俺を見る。先生が俺を運んだのだろうか。寝起きで乱れた前髪を耳に掛けると、少しずつ意識が覚醒していく。
冷静になって改めて周りを見渡すが、誰の気配も無い。何処に行ったのだろうか。
「ウイルスのことは皆に伝えた。容態も徐々に回復している」
「……良かった」
俺の考えていることを見透かして、烏間先生が静かに告げた。それを聞いて、一気に胸の内の不安が拭われる。誰も失わずに済んで、良かった。
安心したからか、欠伸が出そうになる。
先生の手前、出そうな欠伸を、口を閉じて出さないように抑え込む。
「皆は何処に?」
「……アイツが肝試しをやるとほざいて全員外に居る」
肝試しと言われ、首を傾げて外を見る。我ながら情けない。俺がヘリで眠ってから、どれだけ時間が経っているんだ。
外はもう、真っ暗だった。
「君も行くか?」
頭の中で、アイツが驚かそうと行動して、全て空回るのが目に浮かぶ。それに、と自分の脚を見る。この怪我で、どうも歩き回りたいとは思わない。
俺はもう一度、布団に倒れ込んで天井を見上げる。
「待つことにします」
「そうか。ならば、俺も待っていよう」
驚いて先生を見ると、烏間先生は再び書類に目を通していた。決して干渉してくるので無く、ただ静かに傍に居てくれる。
この距離感は、酷く心地良かった。