元生徒副会長はプロの暗殺者と対峙する
「出席番号十二番、立って狙撃!!」
アイツの指示と同時に、人影が立ち上がる。その場に居るのは菅谷。銃声と共に、一発の弾丸が菅谷の眉間に命中する。
だが、残念だったな。
「――今だ。撃て」
「オーケー」
隠れていた千葉が立ち上がり、発砲する。男は弾丸が己に当たっていないことに目を瞬かせ、不適な笑みを浮かべる。
外したと思ったのだろうが、狙いは正確だ。
千葉に拳銃を向けた途端、男の背後に吊り照明が襲いかかる。最初から、千葉の狙いは照明の金具。
俺達は人を殺すつもりは、一切無い。
「フーッ、やっと当たった」
それでもなお、千葉に銃口を向ける男の拳銃を、速水が狙撃する。その衝撃で鉄骨に頭をぶつけ、気絶した男に寺坂が飛び掛かった。
男が気絶したというのに、心臓は相変わらず煩い。
とん、と肩を叩かれ、反射的に緊張感が滲む。
「天霧」
振り返ると、拳銃を片手に俺を見る千葉の姿があった。肩を叩いたのが千葉だと分かると、安心して肩の力が抜けていく。
「良い腕だ。見事な射撃だった」
「天霧のおかげだよ。正直、肩の荷が下りた。ありがとう」
そうか、と口にしたら笑って、そうだと繰り返された。千葉が言うなら、そうなのだろう。組んでいた腕を降ろし、立ち上がる。
俺でも誰かの役に立てたんだな。
「司」
長い前髪の下で、千葉は目元を細めて笑みを見せる。そのまま千葉は、右手を掲げて驚く俺に向かって言った。
「ハイタッチだ」
「あ、はいたっちか」
思わず、呑気な口調で言葉を返してしまう。
遅れて応えるように俺も笑みを浮かべ、千葉の手に合わせるように手を掲げる。
「おつかれ。―――龍之介」
「ああ」
パシ、と乾いた音が静まり返ったホール内に響く。
俺は、良い仲間に出会えた。