元生徒副会長はプロの暗殺者と対峙する



 八階のコンサートホールに辿り着いた俺達。気配の無いホールを突っ切ろうとしたが、僅かな足跡が聞こえすぐさま座席の影に隠れた。

 その時に微かに見えたが、男は本物の拳銃を口に突っ込んでいた。


「十五。いや十六匹か?呼吸も若い。驚いたな、動ける全員で乗り込んで来たのか?」

 呼吸だけで俺達の人数を看破したのか。化け物染みた感の鋭さだ。挙句、背後から聞こえる銃声に冷や汗が流れる。

 コイツは間違いなく、俺達を撃つ。


「このホールは防音で、銃は本物だ。お前ら全員撃ち殺すまで誰も助けに来ねぇ。人殺しの準備してねーガキは、大人しく降伏してボスに頭下げとけや!」
「―――!」

 男が話している途中、一発の銃声がホール内に響く。恐らく、男の拳銃を狙い撃ち無力化を狙ったのだろう。敵も警戒したのか、背後照明が明るくなる。

 これでは、こちら側から逆光が邪魔で敵の姿が捉えられない。


「意外と美味ぇ仕事じゃねェか!」


―――


「今日も元気だ。銃が美味ぇ」

 一発の銃弾が、速水が隠れている座席の真横を通過する。成る程、男も経験を積んでいるだけあって好奇を決して見逃さない。

 発砲された位置を把握し、必ず仕留める。


「もうお前は、そこから一歩も動かさねぇぜ」

 獲物を狙う、狩人のようだ。一歩でも間違えた動きを取れば、間違いなく撃ち抜かれる。

 さてどうするか、と打開策を考えていた―――その時。


「天霧君。君の力を貸してください」

 斜め正面前から、アイツ指示が耳に届く。烏間先生を支えていた俺は、敵から最も近いステージ正面に居る。

 囮として座席の上に乗せたアイツは、俺の不安を拭うように笑う。
 君なら、成し遂げることが出来ると。


「――速水、そこで待機だ。敵に位置を知られていない千葉は、何があっても撃つな」
「チッ。中坊に指揮させるのか」

 全く、アイツは俺に何を望んでいるのか。口元を緩ませ、頭の中でホール内の空間マップを思い浮かべる。

 頼りにされたからには、必ず期待に応えよう。


「狙い時は必ず来る」
「そんな時はこねェ、よ!」


 抜かせ。全員が隠れた位置を思い浮かべ、マップに照合する。
 俺達を、ただの中学生だと侮るな。



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