元生徒副会長はプロの暗殺者と対峙する
階段を登り、いよいよ終盤戦。
VIPフロアなだけあって、客個人で雇った見張りが廊下を見張っていた。それもあって、犯人側か無関係な人間が雇ったのかは分からない。
どちらでもいいが、あの警備を倒さない限り上の階へは進めない。
「倒さなきゃ通れねぇ。どっちみち一緒だろうが」
「その通りです。そして倒すには、君が持ってる武器が最適ですねぇ」
警備を睨む寺坂に向かって、アイツは不敵な笑みを浮かべながら寺坂の持つ鞄を見る。
「ケッ。透視能力でもあんのか、テメェは。おい、木村。テメェ一人なら敵だとは思われねーだろ。アイツ等をここまで誘い出してこい」
「俺が?どーやって?」
寺坂の無茶ぶりに木村は狼狽える。それもそうだ。突然そう言われて、実行するのはかなり難しい。そんな木村に、カルマがそっと耳打ちする。
木村は頷いて、警備の前に出る。果たして何を囁いたのか。
「何だ坊主?」
「あっれェ~、脳みそ君がいないな~。コイツら頭の中まで筋肉だし。人の形してんじゃねーよ、豚肉どもが」
子供だと油断を見せていた警備の額に、青筋が幾つも浮かぶ。木村を追い掛けながら叫ぶ警備の声には、怒気が凄まじく含まれている。
御蔭で、目標まで残り数メートル。でかしたな木村。
「――おっし今だ、吉田!」
「おう!」
警備の二人が裏口付近まで走って来た瞬間、待ち構えていた寺坂と吉田がタックルする。そのまま流れるように倒れ込んだ男の首元に、寺坂がスタンガンを首元に当てる。
電気ショックが接触したことによって、男共は完全に気絶した。
「臨時収入があったから買っといた。こんな形でお披露目とは、思わなかったがよ」
「いい武器です寺坂君。ですが、その二人の胸元を探ってください。もっと良い武器が手に入るはずですよ」
アイツに言われた通りに、寺坂が警備の胸元を探る。そこから出て来たのは、本物の拳銃が二丁。俺達が普段使用している銃とは、訳が違う。
それだというのに、アイツは千葉と速水に銃を持たせるように指示を出す。
「…だからって、いきなり」
「君達の腕前でそれを使えば、傷付けずに倒す方法はいくらでもあるはずです」
烏間先生が精密な射撃が出来る程回復してい無い今、この場でアレを一番に使えるのは二人だ。しかし、二人はリゾートでの暗殺で自身を喪失している。
「さて、行きましょう」
プレッシャーに押し潰されなければいいが、心配だ。
いざとなったら、俺がやろう。