生徒副会長は堕ちる
内心不安を抱いていた授業の時間であったが、黄色い生物が行う授業は普通に行われ杞憂に終わった。寧ろ、今まで教わってきた教師よりも分かりやすかったくらいだ。
ますます、この黄色い生物の目的が理解出来ない。
「久し振りだな、天霧」
「磯貝」
休み時間になると、俺の机の周りには数名の生徒が集まっていた。その中で、先陣切って声を掛けて来たのは磯貝だった。
このクラスに居る磯貝と片岡は、委員の集まりで何度か顔を合わせたことがある。
「最初は驚いたけどさ、同じクラスに為れて嬉しいよ」
「そうか。そう言ってもらえると俺も嬉しいな」
それが切っ掛けとなって、色々な質問が同時に飛んで来た。身長に好きな食べ物、趣味や特技など。取り敢えず、聞こえたものを順番に答えて行くと、潮田の隣にいる茅野が不思議そうに首を傾げた。
「思ったんだけど、天霧君って皆の名前憶えてるの?」
「なんで?」
「だってさ、私達まだ自己紹介してないんだよ」
茅野の言葉に、確かにと納得する声が上がった。その疑問に答えると、答えは正解だ。俺が生徒副会長の席に就任した時、何かあっても対応できるように一度だけ全校生徒の名簿に目を一通り通した。
「ああ、憶えている」
「じゃあさ、それって下の名前も?」
勢い良く近付いて来たと思ったら、目の前の空席に座った中村の金髪の髪が宙を舞う。あたかも興味津々といった顔で聞かれ、俺はその名を呟いた。
「莉桜……だろ。花を連想させて実に良い名前だ」
望んでいた回答では無かったのか、中村が目の前で口をポカンと開いて固まる。思わず、どうしたと聞いたら、周囲から力が抜けたような溜息を吐かれた。
「っはーー、何かイメージと全然違う」
「確かに!そんでもって、仲良くなれそうだわ。よろしくなー」
タイミング良く休憩の終了を知らせる鐘が鳴り、各自よろしく、と口々に告げて自分の席に戻って行く。どんなイメージを抱かれていたのかは知り得ないが、まあ良かった。
俺を受け入れてくれて。