元生徒副会長は島に上陸する
「よし、こっちは終わったよ」
「こちらも終わった」
島に上陸し、ホテルへ荷物を置いて来た俺等は、班別行動と称して秘密裏に計画を実行していた。俺達の班は、水中に仕掛けを張るのが役目だ。
今までになかった大規模な計画だったが、順調に進んでいる。
「皆、次はうちの班に来る番だよ!早く着替えないと!」
他の班と連絡をとっていた、茅野から指示が飛ぶ。水中の中でカルマ達と目配せし、仕掛けの最終確認を行う。良し、問題はなさそうだ。
早くしないとアイツが戻って来るらしいので、俺達は地上へ戻った。
――
「イルカってさぁ」
――全く眠らないらしいよ。潮風に溶け合うように呟かれた声が、俺の耳に届く。口には出さずに、初めて知った知識に驚きながら水面を跳ねるイルカを眺める。
一頭が跳ねると、もう一頭も飛び跳ねる。
愛らしい、と思う反面、羨ましいと思った。眠らなければ、見たくもない夢を見なくて済む。魘されることも無い。
何て、幸せなんだろうか。
「なーに考えてんの」
何も、と返して隣を見る。船の手摺りに凭れ掛かる赤髪は、潮風に煽られて乱れていた。それでも、揺るがない眼差しに居た堪れなくなる。
時折、カルマは思考が読めるのではないかと疑いたくなる。
「そうだ。司さぁ、賭けのこと忘れてないよね?」
突然、思い出したかのように口に出された言葉に、頭を抱えたくなる。忘れる訳がない。以前、俺とカルマは、烏間先生とイリーナ先生のどちらが勝つか賭けた。
結果、烏間先生に賭けた俺は負けた。
「……ああ」
カルマが勝利した為、俺は烏間先生を幼児が父親を呼ぶような呼称で呼ばなければならないのだ。
賭けは、賭けだと腹を括ってはいたが、ここで持ち出されるとは。
「面白そうだからさ、ここに居る間に呼んでよ」
俺に与えられた猶予は、三日。ある意味、今回の本来の目的より難易度が高い。