元生徒副会長は島に上陸する
「あ、見えてきたよ!」
船を乗ること約6時間。倉橋が海の向こうにある島を見て飛び跳ねる。島と言っても案外、こじんまりとした小島だった。
目立つものと言えば、崖際にそびえ立つ建物だろうか。
「なーに黄昏てんの、よっ!」
「……先生」
俺の首に腕を回し、必要以上に密着してくるイリーナ先生を押し遣る。文句を飛ばしてくるが、勘弁して欲しい。俺も男である以上、刺激が強すぎる。
口に出すと、揶揄われるのは目に見えているから言わないが。
「まあいいわ。ちゃんと着てきたようだし」
「えーー?ビッチ先生、どういう意味?」
島に夢中だったはずの倉橋が、イリーナ先生の傍まで行き興味津々に聞く。それに合わせて、わらわらと女子達が集まった。
先生は気を良くして、腰に手を当てながら自慢げに話す。
「司が今着てる服、私が選んだのよ」
「嘘ォ!?え、まさか二人って―――」
なわけない、と俺と先生の声が重なる。大体、先生には烏間先生が居る。面倒くさいが、そうなった経緯を話すと、納得したように茅野が激しく頷いた。
「じゃあさ、先生が服選ばなかったら、今日制服で来たの?」
「さあな」
女子の間で話のネタにされると、反応に困る。それに、そろそろ島に到着する時間だろう。俺は軽く手を振り、逃げるようにその場を去った。
やがて、船の動きが止まる。
「っしゃ、行こうぜ!!」
「おおーー!!」
地上に降り、空を見上げる。雲から覗く太陽が、じりじりと肌を焦がす。実にいい天気だ。深く息を吸うと、潮風が鼻孔を掠める。
今この瞬間―――俺達の暗殺が始まった。