元生徒副会長は夏休みを迎える



「一人一冊です」


 終業式が終わるなり、配布された分厚いしおり。以前の修学旅行の時より、バージョンアップしているような気がするのは気のせいだろうか。

 これでも足りないと言っているアイツは、些か可笑しい。


「これより夏休みに入るわけですが、皆さんにはメインイベントがありますねぇ」
「ああ、賭けで奪ったコレのことね」

 そう言って、中村が開いたパンフレットに記載されているのは―――椚ヶ丘中学校、特別夏期講習。沖縄離島リゾートにて、二泊三日の国内旅行。

 本来ならば、成績優秀クラスにしか与えられない報酬。だが、今回の期末の上位はA組とE組で独占している。

 今の俺達であれば、その資格が充分にあるのだ。
 

「君達の希望だと、触手を破壊する権利は教室ここで使わず、この離島の合宿中に行使するということでしたね」

 触手五本のハンデに加え、四方はアイツの苦手な水で囲まれた島。
 地形を利用し、万全に命を仕留める。


「親御さんに見せる通知表は、先程渡しました。これは、標的せんせいから暗殺者あなたたちへの通知表です」

 二重丸が描かれた大量の紙が、教室内に舞う。突拍子もない行動に、呆れながら机の上に落ちてきた一枚を手に取り、笑う。


 俺は、E組に来れて良かったと思う。

 挨拶にE組に向かえば、怪物を暗殺して欲しいと言われ、少し経たない内に二人の転校生が加わった。人工知能に、アイツの兄弟。


 実に短くも、濃い月日だった。


「暗殺教室、基礎の一学期!これにて終業!!」


 授業終了を知らせる予鈴が鳴り、席を立つ。
 いよいよ、夏休みが始まった。



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