元生徒副会長は夏休みを迎える
カルマside
返却された答案用紙を見た途端、俺は教室を抜け出した。サボるのに適した、校舎から離れた木の幹に凭れて、行き場の無い感情を手元の紙にぶつける。
総合点数469点―――学年十三位。赤羽 カルマ。
「さすがにA組は強い」
ぐしゃり、と答案用紙を握り締めると、殺せんせーが目の前から歩いて来た。胸の内で、舌打ちを溢す。俺に今、冗談を飛ばす余裕なんてない。
「5教科総合は、7位まで独占。学年トップは天霧君でしたが、当然の結果です」
A組も、司も負けず劣らず勉強をした。テストの難易度も上がっていたし、怠け者がついていけるわけがない。
「……何が言いたいの?」
だから、何。と言いたい気持ちを抑え込む。湧き上がる感情を押さえている今、コイツが何を言おうとしているのか分からなかった。
苛立つ俺を他所に、コイツは目を細めて笑う。
「恥ずかしいですねぇ~『余裕で勝つ俺カッコいい』……とか、思ってたでしょ」
「―――ッ!!」
指摘されて気付いた事実に、顔に熱が集まる。ソレは完全に図星で、俺の自尊心が認めたくないと邪魔をしていた。
暗殺も賭けも、今回俺は何の戦力にもなれない足手纏い。
「分かりましたか?刃を研ぐのを怠った君は暗殺者じゃない。錆びた刃を自慢げに掲げた、ただのガキです」
「……チッ」
ナメ切った顔で、俺の頭を触る触手を振り払う。アイツの言っていることは正しかった。いつも俺は、勉強も運動も何をやっても人よりも出来た。
心の中で、何処か俺は他人を見下していた。
負けるのがこんな悔しいだなんて、思っても居なかった。
『カルマ。予習は済んだか』
期末試験の前日の放課後、司は言ってきた。その言葉を無化にした自分が情けない。俺が見習うべき相手は、すぐ傍に居た。
次こそは、司も浅野君も抑えて、俺が勝つ。