元生徒副会長は夏休みを迎える
いよいよ、試験の日がやってきた。俺達E組は、本校舎へ向かう。
E組がA組と賭けをしたことが既に全校に広がっているらしく、いつになく注目を集めている。
人のことを見ている暇があるとは、余裕だな。
「……ふぅ」
しかし、俺がやることは只一つ。
全力を尽くし、
簡単に支配者になれると、驕るなよ。
――
進学校であるこの学校は、中学三年から高校の範囲を習い始める。特にペースが速いのは、英語と数学。そして、理科だ。
テストに一通り目を通し、ペンを持つ。
『先生、こういう繊細な反逆に憧れてましてねぇ。ぜひ二か国語で読んでください。君達の年頃ならキュンキュン来るはずです』
一番最初に行われるのは英語。
毎日のように本を進めてくるアイツの御蔭で、答えはすぐに導き出された。
J・D・サリンジャーによる長編小説―――
続いて理科、社会、と順調に進む。
用紙を捲ると、国語の字が目に入った。苦手意識を持っていた国語だが、E組に来てから何となく俺は相手の感情を汲み取れるようになった。
E組で変わったのは皆だけでは無かった。
最後に―――数学。
数学は、円周率の半分を憶えてしまう程 一番好きな教科といっても過言ではない。数学は良い。どんな問題でも、答えに納得できてしまう。
『天霧君、君の才能は素晴らしい!そこで、少しステップアップしてみましょう』
アイツが俺に高校生の範囲を超えた勉強を教えてくれた御蔭で、一度もペンが止まることは無かった。