元生徒副会長は夏休みを迎える



「ん?お、進藤か」

 テスト勉強が一段落し教室に戻る最中、杉野に電話が掛かってきた。どうやら相手は、球技大会で世話になった進藤のようだ。

 最初は軽い世間話をしているようだったが、急に顔色を変えた杉野がスピーカーに切り変える。


『――今、会議室にA組が全員集結して自主勉強会を開いている』


 ほう、と感心して顎に手を添える。


 その勉強会の主催は、五英傑。
 メンバーは、中間テスト三位の荒木。続いて四位の、榊原。次に、五位の小山。最後に、六位の瀬尾。

 そして、中間テスト二位。全国模試同率一位。

 ―――浅野学秀。


『このままだと、トップ50はほぼA組で独占だ。奴等は、お前らE組を本校舎に復帰させないつもりだ』
「ありがとな進藤。心配してくれてんだろ?」

 洗脳が解ければ、進藤は友を心配する優しい心の持ち主だったようだ。杉野は電話越しに笑って、前を歩く標的を見据えた。


「でも大丈夫。今の俺達は別の目標がある。その為には、A組に負けないくらいの点数を取らなきゃなんない」
『……勝手にしろ。E組の頑張りなんて知ったことか』

 最後に、進藤は頑張れと呟いて電話を切った。何ともまあ、憎むに憎めない奴だ。


「俄然やる気が出て来たー!」

 負けてられないと意気込む杉野達の後ろで、大勢の前で勉強を教える学秀の姿が目に浮かぶ。

 やはり、学秀が高い壁として立ちはだかったか。


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