元生徒副会長は夏休みを迎える
「……学秀」
枕元の振動で、俺は目を覚ます。反対側にある眼鏡を掛け、振動したスマートフォンを手に取ると、画面に学秀からメッセージが届いていた。
珍しい。俺がE組に行ってから、音沙汰も無かったのに。
スライドし、開いたトーク画面には―――。
『今回は負けない』
短い文面だった。だが、それを意味するものは即座に理解できた。
――
「ヌルフフフ。皆さん、一学期の間に基礎がガッチリ出来ました。この分なら期末の成績はジャンプアップが期待できます」
そう、期末テストだ。
以前のテスト勉強のように、黄色い生物が分身し俺達は天気の良い木々の中で勉強していた。
「前回は、先生は総合点ばかり気にしていました。そこで今回は、この暗殺教室にピッタリの目標を設定しました!」
目の前の分身は、俺に分厚い問題用紙を渡し、忙しなく終わったプリントに採点を点ける。右上にあるのは花丸。
しかし、目標か。
ペンを紙の上に置き、俺はアイツを見た。
「さて、先生は触手を失うと動きが落ちます」
懐から銃を取り出すと、自ら触手を一本撃ち落とす。御覧なさい、といって分身を見るように言われ、俺達は分身に目を向ける。
先程までそっくりだった分身の中に、子供の分身が一体。
「さらに一本減らすと」
子供の分身が増え、男女の分身まで増えた。
父親と母親らしいが、設定は悲惨だ。父親が蒸発し、母親は女手一人で子供を養わなければならない。
茶番を挟んだところで、話は本題に戻る。
アイツが触手一本失うことにより、低下する運動能力は約二十パーセント。
「そこで、前回は総合点で評価しましたが、今回は皆さんの最も得意な教科も評価に入れます」
教科ごとに学年一位を取った者には、答案返却時に触手を一本破壊する権利が与えられる。それを聞いた途端、一斉に俺に集まる視線に苦笑する。
確かに、総合と五教科全て誰かがトップを取れば、六本の触手が破壊できる。
「これが、暗殺教室の期末テストです」
期待されるのは、ありがたい。
しかし、記憶力がいいからといって、何も完璧なわけじゃない。