生徒副会長は堕ちる
渚side
日直が号令をすると、いつも通りのHRが始まる。だけど、それは普通の常識とは掛け離れている。
出欠を確認している、殺せんせーに行う射撃。
クラス全員で一斉に射撃しているのに、今までも、これからも当たる気がしない。
「改めておはようございます」
全員の名前が呼ばれ終わり、散らばったBB弾を皆で片付け──―それが終われば授業が始まる。
この時、僕達はそう思っていた。
「実は、今日からこのクラスに新しい仲間が加わります」
「―――え!?」
新しい仲間が加わる、という一言に様々な質問が飛び交い教室は一気に騒がしくなった。性別はどっちなのか、どんな名前なのか――殺し屋なのか。
最後の質問は、僕も気になった。
この時期に来るとしたら、その可能性は高いから。
「ヌルフフフ。皆さんも良く知っている人ですよ。ではどうぞ、入ってきてください」
「な、」
音も無く開いたドアから覗いた、黄色がかった薄茶色の髪。少しつり目気味の水色の瞳に、整った顔立ち。その人物は、真っ直ぐ前を見据えながら教室に入って来た。
「自己紹介をお願いします」
「はい」
一見、表情が変わることなく冷たい印象を与えられるけど、僕は知っている。
「元3年A組、天霧司だ。今日からよろしく頼む」
「「――ええええぇーー!!」」
再び教室中が騒がしくなった。それもそうだろう。彼――天霧君は本校舎でトップレベルの成績に加え、品行方正の生徒副会長だ。
しかもA組から。殆どの生徒は、明らかに天霧君を歓迎するムードではない雰囲気を醸し出して居る。
だけど、僕は知っていた。
彼が、本校舎の人達とは全く別者だと。