元生徒副会長は思い出す
「よーし、そうだ!そんな感じでプール全体に散らばっとけ!」
あれから水着に着替えた俺達は、寺坂の指示通りプール内で全体的に散らばるように浮かぶ。当の本人は、岩場で銃を片手に張り切っている。
黄色い生物は、水が苦手。
寺坂がアイツを水中に落とし、俺達にナイフで刺させる計画。
穴だらけの作戦だ、と思う。
寺坂も見ていなかったわけではないだろう。この作戦は、まずアイツを見ずに落とさなければ意味がない。
まあ、成り行きに任せるか。
作戦が遂行されるまで時間はあるだろうし、頭の粘液を洗い流そうと水中に潜ったその時―――。
水位調整用の水門に取り付けられた、爆弾が目に入る。
―――まさか。
水中で呟いた言葉が、気泡に変わる。
「覚悟は出来たかモンスター。これで、テメェは終わりだ」
赤く点滅するランプ。目の前でひび割れて行く壁。亀裂はどんどん広がる。腕を伸ばそうが、もう遅い。
目を見開いた瞬間、目の前が爆発した。
ごほ、と水圧の衝撃で咳込む。
酸素を求めようと、腕を動かす。しかし、勢いが増した放流の中では無意味な抵抗に終わる。水圧に押されて身動きが思うように取れない。
「っ、がは」
肺に残っていた微かな空気が、口から抜ける。入れ替わるように、肺に流れ込む水。身体が沈んで行く中、溢れ昇っていく泡が目に映る。
水晶玉のようで、幻想的だ。
ごぽ、とまた一つ気泡が水面に向かって昇る。
ああ、確かこの先は岩場があったな。
肌に伝わる冷たい感覚も、息苦しさも、次第に意識と共に薄れていく。
「―――司!!」
この声は、誰だったか。
名を呼ぶ声を最後に、俺は瞼を閉じた。