元生徒副会長は思い出す
「おい、タコ。そろそろ本気でブッ殺してやンよ。放課後プールへ来い」
翌日の昼、上機嫌で教室に入って来たと思えば寺坂はアイツに向かって宣戦布告した。俺達にも手伝えと言うが、その不遜な態度に教室内の反応は様々だ。
目を逸らしたり、無言のまま弁当を食す者。
ガタ、と前原は立ち上がると面倒くさそうに頭を掻く。
「寺坂。お前ずっと皆の暗殺には協力してこなかったよな。それをいきなりお前の都合で命令されて、皆が皆、ハイ、やりますって言うと思うか?」
「ケッ」
最もな意見だ。賛同するように、何人か首を縦に振っている。
だが、寺坂は余程自信があるのか、その時は賞金は独り占めにすると言って出て行く。
「……正直、もうついていけねーわ」
「私、行かなーい」
寺坂と仲の良かった村松が言い出すと、倉橋、岡野が続いた。まずいな。このままでは、寺坂が孤立する。そんなもの、俺が目指す姿ではない。
考えれば考える程、脳が回るようで目眩がする。
どろり、と。
頭から零れ落ちる。
「皆、行きましょう」
べた付く感覚に、視線を上に動かす。何度目になるだろうか。触手が俺の頭にのせられた。同時にアイツから分泌された粘液が、俺の髪を汚す。
「せっかく寺坂君が私を殺る気になったんです。みんなで一緒に暗殺して、気持ち良く仲直りです」
気持ち悪くて仕方が無いはずなのに、一瞬で渦巻く感情が沈んで行く。
いや、待て。
先程、この粘液はアイツの鼻水と言っていた。
「……悪寒が」
考えるだけで背筋が凍った。早くプールで洗い流したい。
待っていろ、寺坂。すぐに行く。