元生徒副会長は思い出す
授業が終わり、つかの間の休憩時間。黄色い生物が作ったプールの御蔭で、教室内は浮ついていた。次の授業である体育が待ち遠しいのだろう。
そんな時だ。血相を変えた岡島が、教室に飛び込んで来る。
「おい皆!来てくれ、プールが大変だぞ!」
「……メチャメチャじゃねーか」
岡島の言葉通り、目の前に広がる光景は悲惨だった。椅子は粉々に倒壊し、プール内に投げ捨てられた大量のゴミ。
全員何らかの感情を浮かべる中、一部だけ違うものに自然と目が行く。
「あーあ、こりゃ大変だ」
「ま、いーんじゃね?プールとかめんどいし」
ニヤけた吉田と村松が呟く。まるで、俺達がやったと供述する態度だ。犯人を捜す手間が省けたな。彼等がやったらしい。
自然と、二人の隣に立つ寺坂に視線が向かう。
「ンだよ天霧、見てんじゃねぇよ」
タイミングが重なったらしく、俺と視線が合った寺坂に睨らまれる。前々から気が立っているとは思っていたが、ここまでとは。
気付けば、寺坂は俺の前に立っていた。
「まさか、俺らが犯人とか疑ってんのか?」
力任せに胸倉を掴まれる。無言のまま掴まれた手を眺めていると、胸倉を掴む力は増して、ギリギリと首が閉められる。
寺坂には悪いが、正直落胆した。
――そんな寺坂に、向けた視線。それは冷たいものだった。
「いや、つまらないことをするな――と、思ってな」
「――このッ!!」
寺坂の振り上げられた拳が、俺に届くことは無かった。黄色い生物がやんわりと受け止め、触手を俺の肩に置く。
「犯人探しなどやらなくていい」
見る見るうちに、コイツの手によって荒れ果てたプールが元通りになって行く。最後に、水面に浮いているお菓子の袋を拾えば完璧だ。
もう一度、寺坂を見る。寺坂は更に俺を睨むと、背を向けた。
去った寺坂の後を、少し気まずそうに吉田と村松が追う。思うが、この二人はE組が気に入らないわけではないらしい。