生徒副会長は堕ちる
あの後、俺の在籍を理事長に確認し終えると、スーツの男――もとい烏間さんに応接室へ案内された。やはり扉を見た通り、応接室も相当古びている。
長年使い古されたであろうソファに腰掛けていると、アタッシュケースを片手に烏間さんは戻って来た。――黄色いUMAユーマを引き連れて。
「単刀直入に言う。この怪物を暗殺して欲しい」
「は、」
遂に俺の眼鏡は壊れてしまったのではないか、と一度取り外して掛け直すものの、目の前に居る黄色い異物は視界から消えない。
「詳しいことを話せないのは申し訳ないが、この怪物が月を壊した元凶だ」
「はあ」
つまり、俺なりに纏めるとこうだ。
この怪物は月を壊した元凶であり、来年三月には地球を破壊する。この件について知っているのは各国首脳のみ。
何故か、椚ヵ丘中学校の 3年E組の担任ならやってもいいと国に提案し、生徒に危害を加えないことを条件に政府は承諾した。
――成功報酬は、百億円。
まあ、妥当な金額だ。この異物を殺すことで地球を救うことになるのだ。寧ろ、足りないくらいだろう。
「なるほど、理解はしました」
「理解・・は、か」
何となくではあるが、理事長が俺をE組へ落とすことを渋ったのも、スーツの上から視て一般男性の筋肉量を遥かに超えていた烏間さんが防衛省の人間だったのも。
手の上に顎を乗せて考え込んでいると、対面に腰掛けている烏間さんの黒い瞳がジっとこちらに向く。
「…いえ、了解しました。俺でよければ是非」
「感謝する」
一瞬、戸惑いはした。
――が、月を壊した怪物だろうが何だろうが知らないが、丁度良い。俺の目的を達成させる為には、それが何であろうと利用させてもらう。