元生徒副会長は刃を研ぐ
「せんせー!放課後、街で皆でお茶してこーよ!」
「……ああ。誘いは嬉しいが、この後は防衛省からの連絡待ちでな」
体育が終わるなり、倉橋が烏間先生をお茶に誘うが即座に断られた。
俺達生徒との間に壁を作っているのではないかと呟く声が聞こえたが、俺はそうは思わない。
イリーナ先生と黄色い生物が、珍しいだけで大半はこうだろう。
「私達のこと大切にしてくれるけど、ただ任務だからに過ぎないのかな」
「そんなことありません」
倉橋の悲観的な言葉に、黄色い生物がはっきり違うと断言する。
「確かにあの人は、先生の暗殺のために送り込まれた工作員ですが、彼にもちゃんと素晴らしい教師の血が流れてますよ」
―――
「……誰だあの人?」
烏間先生の姿が見えなくなったと思いきや、入れ違いになるように大荷物を抱えた巨漢がグラウンドに入って来る。
どう出るのか観察していると、男は中心に荷物を下ろし挨拶する。
「俺の名前は、鷹岡明!!よろしくなE組の皆!!」
どうやら、烏間先生の補佐として派遣されたらしい。
大荷物の中身の正体は、全てケーキ類や飲み物。茅野達女子が目を輝かせていたが、俺は眉間に皺を寄せる。
「モノで釣ろうなんて思わないでくれよ!お前らと早く仲良くなりたいんだ」
「……お前もか」
一瞬目を離した隙に、近くにいた黄色い生物まで涎を垂らしてケーキを眺めている。食べ物の中に何か入っていると疑わないのか。
入っていたとしても、取り除いて食べるだろうが。
「なんか、近所の父ちゃんみたいですね」
「いいじゃねーか、父ちゃんで!同じ教室にいるからには、俺達家族みたいなもんだろ?」
男の偽りの笑顔のせいか、甘ったるい匂いのせいかしらないが―――吐き気がする。