元生徒副会長は刃を研ぐ



 試合開始の合図が鳴り、バッターボックスに一番打者である木村が入る。一球目。進藤から放たれたボールは目にも止まらぬ速さでミットに収まり、ストライク。

 竹林が聞いた話によると、軽く140㎞は出ているらしい。


 続いて二球目。こちらの監督のサインを見た木村はバントの構えを取る。見事に当たった球はピッチャーとファーストの間に転がり、内野を迷わせる。
 その隙に、E組一の俊足えある木村が一塁を制する。


『二番。キャッチャー、潮田君』

 打者が渚に変わると、監督は指示を出す。同じバントの構えだが、今度は三塁線に強く当て、前に出てきたサードの脇を抜く。

 これで、E組こちらはノーアウトで一二塁。


「はは、見てよ司。進化したら殺せんせーみたいになった」
「……色が違う」

 こんな時でも、カルマは隣でゲーム機で遊んでいる。
 確か、図鑑を完成させることが目的のゲームだったか。カルマが見せて来るのは、半分が白く半分が赤いキャラクター。

 形は確かに似ている。…いや、顔も似ているな。
 あながち、間違っていないのでは。


『――打ったァーーー!!深々と外野を抜ける!!』

 大きく金属音が鳴り響き、天高くボールが飛んで行く。走者一掃のスリーベース。よそ見をしている間に、E組が先制点である三点を勝ち取った。


「っしゃあ!!」
「良い振りだった」


 満面の笑みでベンチに戻って来る杉野に言葉を交わしてから、相手側のベンチに集中する。悠々とした態度で顧問に近寄る理事長。

 顔を近付け、己の額を当て何かを囁けば、その場に泡を吹いて倒れる顧問。すぐさま担架で顧問が運ばれていくと、理事長はタイムを取り宣言する。


 ―――監督を引き受けると。


「どう見るカルマ」
「コンテニューかなぁ」


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