元生徒副会長は転校生と邂逅する



 結局、アイツが過去を語ることは無かった。
 例え秘密を知ったとしても、地球を爆破してしまえば無意味に終わる。真実を知りたければ、選択肢は一つ。

 暗殺対象ターゲットを、殺すしかない。


「烏間先生!」
「……君達か。どうした大人数で」

 そうと決まれば、生徒達はすぐに行動に移す。校庭で部下に指示をしていた烏間先生に声を掛けると、作業を一旦中断して振り返ってくれた。

 今までは、誰かが殺すだろうと何処か他人事のように考えていた。
 今回の堀部の件を見て、思い知らされた。


「誰でもない。俺等の手で殺りたいって」

 だから、E組の生徒は教えを乞う。
 先を越される前に殺して、自分達の手で答えを見つける為に。


「……分かった。では、希望者は放課後追加で訓練を行う。より厳しくなるぞ」
「「はい!!」」


 元気よく返事をする皆を、少し離れた木の幹の麓で眺める。いきなりロープ昇降の訓練か。烏間先生も容赦ないな。


「行かなくていいんですか?天霧君」
「ああ」

 頭上から黄色い生物の声が降りかかる。訓練に励むE組の生徒から目を離さずに、俺は静かに腕を組んだ。


 別に俺は、コイツを殺す気はない。
 こんな優れた生物はどこを探してもいない。姿形が異なるだけで、理想の先生というやつだ。

 秘密は確かに気になりはする。だが、殺してまで知りたいとは思わない。


「……何故か聞いてもいいですか?」


 こんな言葉がある。
 明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。

 俺はこの言葉が大嫌いだ。


「人はいつか死ぬ。それは、今日かも知れないし明日かも知れない」


 報酬が破格の金額でもどうでもいい。
 地球が破壊されようとも、いずれ死ぬには変わりない。時期が早まっただけだ。


「……いや、なんでもない。冗談だ」


 何か言いたげな黄色い生物に背を向けて、烏間先生達がいる方へ足を進める。

 ああ、何だか一人取り残された気分だ。



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