元生徒副会長は転校生と邂逅する
「生き返りたいのなら、このクラスで皆と一緒に学びなさい」
性能計算ではそう簡単に計れないもの。
それは経験の差だ。
俺達より少しだけ長く生きた分、得た知識は多い。黄色い生物はそれを俺達に伝えたいがために教師になったと口にする。
「この教室で先生の経験を盗まなければ、君は私に勝てませんよ」
「……勝てない。俺が、弱い?」
さて、ここで問題だ。
強くありたいと固執する人間がいざ敗北を知るとどうなるか。
「俺は――強いッ!!この触手で誰よりも強くなった!!」
答えは、自分は弱くないと言い張り、他人に転嫁することによって己を正当化し暴走する。触手を真っ黒に染め上げた堀部が、リング内に戻ってこようとする。
だが、その前に堀部は気を失い床に倒れた。
「どうもこの子は、まだ登校できる精神状態じゃなかったようだ。転校初日で何ですがしばらく休学させてもらいます」
またこの男か。シロの袖からは、麻酔銃が覗いていた。これで堀部を気絶させたのだろう。シロは堀部の元へ近づくと乱雑に担ぎ上げる。
「待ちなさい!」
「いやだね、帰るよ。力ずくで止めてみるかい?」
そのまま去ろうとする男に、黄色い生物は待つように声を掛け触手を伸ばす。安い挑発に乗るな。忘れたのか。あれだけ着物の中に小細工を仕掛ける男だぞ。
「……!!」
言わんこっちゃない。シロの着物に触れた触手が破壊された。
「心配せずともまたすぐに復学させるよ、殺せんせー。三月まで時間は無いからね」
―――
突然現れては、消える。まるで嵐が過ぎ去った後のようだった。
何とも言えない空気を醸し出しながら、俺達は机の配置を元に戻す作業を行う。
全く、どうせなら片付けをしてから帰ってくれ。
「……でも驚いたわ。あのイトナって子。まさか触手を出すなんてね」
誰もが抱いていた疑問をイリーナ先生が呟いた。最初に木村が肯定し、順にE組の生徒は説明してくれと黄色い生物に詰め寄る。
まあ、俺達がコイツのことを知る権利はある。
「……実は」
押し負けたのか、観念したように黄色い生物はおもむろに喋り出す。
「実は先生、人工的に造り出された生物で――」
「そんなことはどうでもいい」
俺達が知りたいのは、その先にある隠された何か。
人工的に造り出された生物なら、どういった理由で生まれ何故E組を選んだ。
お前は何だ――?