元生徒副会長は転校生と邂逅する
弱点を知っていると告げたシロの言う通り、黄色い生物は着々と追い詰められていく。身体を動かす為に使った脱皮。しかし、それにも弱点はあった。
脱皮を行うには、膨大なエネルギーを消耗する。
常人からすれば速いことには変わりないが、堀部にとっては関係ない。
どちらが優勢かと聞かれれば、僅かの差で堀部だろう。
「お、おい。これマジで殺っちゃうんじゃないの」
言えている。動きを鈍らせるシロによる支援。堀部は、隙を吐いて黄色い生物の足を切断する。この勝負、もしものことがあるかもしれない。
ここで堀部が殺れば、地球は救われる。
「安心した。兄さん、俺はお前より強い」
だが、いささか気に障る。
俺の目的を達成させる為には、コイツが必要不可欠。ここで死んでもらったら困るのだ。
「……ここまで追い込められたのは初めてです。貴方達に聞きたいことは多いですが、まずは試合に勝たねば喋れそうにないですね」
「まだ勝つ気かい?負けダコの遠吠えだね」
だから俺は手始めにBB弾をばれない程度、堀部の方へ転がす。兄弟だというなら、弱点も同じはずだ。仕上げに、対先生ナイフをシロの視界に入らない位置で手に持つ。
一瞬ではあるが、黄色い生物と目が合った。
口角を上げ、手からナイフが消えたことに俺はまるで知らないフリをする。
「シロさん、貴方は一つ計算に入れ忘れていることがあります」
「無いね。――殺れイトナ」
白の命令で堀部は跳躍し、触手を黄色い生物へ叩きつける――が、攻撃を受けたのは堀部の方だった。
「―――!?」
「おやおや、どうやら落とし物を踏んづけてしまったようですねぇ」
唖然として、シロと堀部は先程まではなかった対先生ナイフが落ちていた床を見る。
「そして同じ触手なら弱点も同じ。触手を失うと動揺するのも同じです」
動揺を隠せないでいる堀部を、黄色い生物は己の抜け殻で包み、窓の外に向けて放り投げる。窓ガラスを突き破り、外にだけ出された堀部。
それにより、場外へ足を着けた堀部の負けが決まった。
「先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせば君は死刑。もう二度と先生を殺れませんねぇ」