元生徒副会長は転校生と邂逅する
約束の放課後がやって来た。教室の中央には、机で作られた簡易的なリングがある。
只の暗殺ではつまらないという理由で、シロによってリングの外に足が着いたら死刑というルールまで設けられた。
この男も良く頭が回る。
先生として固執する黄色い生物にとって、約束は絶対だ。
「……いいでしょう。ただし、イトナ君。観客に危害を与えた場合も負けですよ」
上着を脱ぎ捨て、無言で堀部は頷く。両者が了承したことを確認すると、シロは手を上げた。
「では、暗殺――開始!」
シロが手を振り下ろしたと同時に、閃光が走る。気付けば、床に転げ落ちる一本の触手。余りの衝撃に動揺を隠せない。教室中にいる生徒の視線が堀部の頭部に集中する。
荒々しく振り回される髪は――正に触手。
「……だ」
全てが納得できた。堀部が雨の中濡れていなかった理由も、兄弟だと言ったことも。
「どこでそれを手に入れた!!その触手を!!」
地面を揺るがす膨大な怒り。いつもの黄色い顔から一変して、黄色い生物は顔を真っ黒にして怒りを露わにした。
そんな黄色い生物に向かって、シロは君に言う義理はないと冷たく言い放つ。
「でも、これで納得しただろう。両親も違う。育ちも違う。だがこの子と君は兄弟だ。しかし、怖い顔をするね。何か、嫌なことでも思い出したかい?」
「どうやら貴方にも話を聞かなきゃいけないようだ」
「聞けないよ。死ぬからね」
シロの着物の袖から放たれた光に俺は目を細める。用意周到だな。視界の端に、黄色い生物が身体を硬直させたのが見えた。恐らくは、動きを鈍らせる何らかの光線。
「全部知ってるんだよ。君の弱点は」