元生徒副会長は転校生と邂逅する



 俺がイリーナ先生と時間を共にした日々は、E組の生徒に比べると少し少ない。少ないと言っても数週間程度だが。

 授業は過激。正解、不正解だったとしても不特定多数の前で口付けをする。
 それでも俺は思う。彼女は素晴らしい、先生だと。



「――と、言うわけだ。迷惑な話だが授業には影響を与えない。普段通り過ごしてくれ」


 草陰に不審な男がいるとは感付いていたが、急な話だな。烏間先生が言うには、あの妙な男はイリーナ先生の師匠らしい。
 ある理由で師弟で烏間先生を狙い、先に烏間先生を暗殺した方が勝ちの謎の勝負が始まったそうだ。ちなみに男が先に暗殺した場合は、イリーナ先生はこの教室を去ることになる。

「ねえ、天霧君は成功すると思う?」
「1パーセントだな」

 潮田の問いに即答する。結論から言うと、成功するのは奇跡に近いだろう。彼女と男の技量を侮っているわけではない。

 烏間先生が負ける結末をいくら考えても、何かが起きない限り有り得ないのだ。


「いったーーい!!おぶってカラスマおんぶ~~!!」


 現に、暗殺を仕掛けた筈の暗殺者が、標的に助けを求めている。論外だ。実戦なら、相手が余程間抜けじゃない限り死んでいる。


「だろ?」
「あはは……」


 でもまあ、イリーナ先生は応援している。
 彼女の代わりは居ない。



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