元生徒副会長は転校生と邂逅する
自律思考固定砲台がやって来て二日目。
HRの始まりと同時に、固定砲台が起動し始める。だが、液晶に映るAIの表情は固まり、箱が激しく揺れるだけで発砲音は起きない。何故なら、ガムテープで固定されているから。
「……この拘束は貴方の仕業ですか?明らかに生徒わたしに対する加害であり、それは契約で禁じられているはずですが」
「ちげーよ。俺だよ」
真っ先に黄色い生物に疑いを掛けた固定砲台を、寺坂が非難する。
「どー考えたって邪魔だろーが。常識ぐらい身に着けてから殺しに来いよポンコツ」
ガムテープを指先で回しながら、うんざりして険悪な顔つきの寺坂。誰も、寺坂の行動と言動を咎める者はいなかった。
まあ、予期出来た結果だ。
「天霧君、放課後予定はありますか?」
「特にないが」
固定砲台を拘束していたことによって、平穏な一日を過ごせた日の放課後。黄色い生物に呼び止められ、俺は誰も居ない教室で佇んでいた。
いや、誰もいないと言うのは語弊があるな。固定砲台が居る。
「……?」
腕を組みながら教室で待機を命じた黄色い生物を待っていると、固定砲台から電子音が鳴る。
液晶画面に視線を向ければ、接続中の文字。
予め組み込まれたデータの予想外のことが起きれば、これも道理か。
「開発者にでも助けを求めるのか」
「!……貴方は」
俺が話し掛けた事によって、接続中の画面が途切れAIの姿に切り替わる。
「もう一度聞くぞ。開発者に助けを求めるのか」
相変わらず変わることのない表情で、静かに俺を見据えるAI。
「はい。私の独力で解決できないと判断しました。対策を要請しようとしている最中です」
「成る程」
鰯の頭も信心から、とはよく言ったものだ。飛んだ箱入り娘に一つだけ苦言を呈する。
「お前は、生徒でありE組の一員に加わった。今日、何故彼等に妨害されたか考えろ。お前は開発者の言いなりになる只の機械か?」
「天霧君」
背後から背中を突かれ、振り向くと多大な工具を抱えた黄色い生物が微笑んでいた。お待たせしましたと告げると、黄色い生物は固定砲台に協調性の大切さを教える。
この言葉が効いたのか、固定砲台はようやく暗殺以外のことに興味を示した。
言質は取った。更に笑みを深くして、黄色い生物は固定砲台に触れる。
「その機能は不要だ」
「にゅやッ!必要ですよ!」