元生徒副会長は輪に加わる



 結局、あの後は自由時間になった。
 一番の理由は、国が手配した 狙撃手スナイパーが任務を辞退したことが大きいだろう。修学旅行の半分の名目が居なくなったのでは、本末転倒もいいとこだからな。


「ん~~!おいしいーー!!」

 まずは茅野が食べたがっていた、抹茶わらび餅を売っている店に寄った。
 俺が甘味は苦手だと遠慮して、それを面白がったカルマに無理やり口に入れられた時は反射的に嘔吐いてしまったが、いざ食べてみると甘さが苦手な俺でも食べやすい風味で、美味しかった。

 宇治茶はもう一度、呑みたいな。


「ねー、司。これつけてなよ」


 そう言ってカルマに差し出されたのは、鼻眼鏡。何だこれは。土産屋に来て、各自好きなものを買ってこようと決めたのに、どうしてそれをチョイスした。困惑していると、いつものようにカルマは悪戯っ子みたく笑う。

「眼鏡ないと落ち着かないんじゃない?ピッタリじゃん」
「……違和感は確かにある。だが、度が入ってないだろ」

 結論を下すと、カルマは不服そうに口を尖らせた。まあ、無いよりはマシか。せっかく俺に買った物なのに粗末にするのも悪いしな。カルマの手から鼻眼鏡を受け取ると、無言で掛ける。
 鼻の部分が邪魔だが、悪くはない。

「―――ぷッ、あはははっ!!ホントに掛けた。見てよ、渚君!!」
「どうしたのカルマ君……って、天霧君!?」

 会計を済ませた潮田が丁度近くにいて、爆笑しながらカルマが手招きする。不思議そうに歩いて来た潮田は、俺を見るなり固まった。

 ご満悦のようで何より。
 修学旅行も、悪くはないな。



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