元生徒副会長は輪に加わる



「……ッ」
「天霧!!目が覚めたのか!?」


 うつ伏せで倒れていた俺は、激痛が走るのを感じながら顔を上げる。だが、先程に比べれば多少マシになった。視界が定まらない中、床を手で探り、傍に落ちていた硝子の破片を掴む。
 あの男達が所有していた物に、硝子の類は無かった。

「オイ、あんま動くなって!」

 起き上がろうとする俺を制止する杉野を無視して、身体を起こす。倒れた衝撃に外れた眼鏡が膝上に落下し、状況を物語る。同時に、どろりと額から熱を感じ、視界の端が赤に染まった。

「大変!血が……!」
「問題ない」

 軽く額に触れたが、傷は深くはない。壊れたレンズの破片で多少切れただけだ。それよりも先にする事がある。

「状況を理解したい。教えてくれ」
「あーもー!ジッとしてろって言っても聞かなさそうだし、俺から説明する」

 杉野によると、あの後こちら側の男は全滅。神崎と茅野が連れ去られ、奥田は隠れていたから、この場にいる――というのが現状らしい。
 無神経な考えだが、奥田だけでも助かって良かった。


「おい、カルマ」


 やっと思考が回り始めた俺は、壁際で苛立ちを隠せないでいるカルマに声を掛ける。

「肩を貸せ。これでチャラだ」
「ははっ、……ありがと」

 俺もそこまで鈍くない。俺に説明する杉野を眺めていたように見えて、カルマの視線が俺の額に注がれているのには気付いていた。


「潮田。しおりの1243ページを開け」
 

 恨みはしないし、憎みもしない。ただ、この借りは、倍にして返す。

 ―――反撃返しだ。



8/12ページ
スキ