元生徒副会長は困惑する



「全く、何で私ら無関係の生徒まで連帯責任かねぇ」
「ごめんよ~……」

 子供と言うのは、よく食べてよく遊ぶ。どこにそんな元気があるのか、その小さな体で驚くほどよく走った。子供達の相手をしながら、申し訳なさそうに謝り続ける大河をフォローしながら、老朽化が進んだ天井に視線を向ける。

 正直、この施設は旧校舎よりもボロい。

 見上げた天井は所々割れ、隙間風が酷い。そのせいか、雨漏りでもしたのだろう。先程、さくらと呼ばれる女児が痛んだ床を踏み、抜け落ちた。


「怪我は?」
「…ない。あ、ありがと」

 少女を抜け落ちた床から抱き上げ、すぐ近くの床に降ろす。怪我はないようだが、かなり危険だ。施設の女性に修繕しないのか聞いたが、費用が無いらしい。この施設は、待機児童や不登校児が居れば片っ端から格安で預かるらしく、職員も満足に雇えず園長……松方さんが一番働いているそうだ。

 それを聞いて、俺達はますます蒼褪める。
 どれだけ俺達が、多大な迷惑を掛けてしまったのか。


「29人で二週間か。…なんか色々できんじゃね?」
「できるできる」


――


「やめて!騎士カルマ、もう誰も傷つけないで!」
「いやいや姫!この魔物を退治しないと王国の平和は戻りませんって」

 そこで俺達は、自分達で何かできることは無いのか考え、三つのグループに別れた。まず一つ目。このグループは施設の中で、劇をやって子供達の注目を集めてもらっている。その間に二つ目のグループが、老朽化した施設の修繕作業。

 そして、最後のグループ。


「ねえ、ここ分かんない!」
「…ああ、ここか」

 理由があって学校へ行けない子達の、勉強を見る班だ。鉛筆を置いた子供のノートを覗きながら、噛み砕いてわかりやすく解き方を教えるが、ここで俺は初めてアイツの苦労を知る。

 自分で学ぶ分には簡単だが、一人一人の生徒の反応を見て、教える内容だけではなく、教える順序を考えるのは、至難の業だった。


「……あ、解けた!解けたよ、お兄ちゃん!」
「二重丸、だな」
「うん、ありがと!!」

 だが、何かに躓いて前へ進めない子供が壁を越えて、こうして笑顔を見せてくれるならば、存外教えるというのも悪くない。



5/7ページ
スキ