元生徒副会長は困惑する
「みんなー!園長先生はお怪我しちゃって、暫くお仕事できないの。代わりにね、このお兄ちゃん達が何でもしてくれるって!」
「はーーい!!」
施設の女性に紹介されると、部屋の奥から沢山の子供達が飛び出してくる。元気があるのは良いことだ。思い思いに、子供の相手をしている茅野達を見ていると、ズボンの裾を引っ張られる。
屈んで目を合わせると、数人の女児が頬を染めて俺を見た。
「おままごとしよ!お兄さんは、わたしの旦那さんね!」
「ちょっと、待ちなさいよ!このお兄ちゃんはわたしの旦那さんよ!」
……旦那?最近の子供は、家庭を築くのが夢なのか。言い争う彼女達に呆気に取られていると、いきなり指を指されて、どちらがいいの、と睨まれる。こういう時、どうしたらいいのか分からない。
頭の中で慎重に言葉を選んでいると、背後からプッ、と笑う声がする。
「修羅場じゃん」
「…助けてくれ」
笑っていたのは、やはりカルマだった。この際、誰でもいい。カルマに助けを求めるが、無慈悲にもアイツは笑顔で別の場所へ移動する。そうだ、アイツはこういう奴だった。
目の前にある面白いことを、逃すはずが無い。
その間にも、彼女達は言い争っていた。この隙に移動しようと、俺は腰を上げる。しかし突然、ネクタイが前に引っ張られる感覚に驚いて手を付けば、不機嫌な彼女達の顔が目の前にあった。
「どこいくの?」
「まさか、浮気!?」
勘弁してくれ。どこでそんな言葉を憶えて来るんだ。