元生徒副会長は困惑する
「保育施設を経営している松方さんです。まずはしっかりと謝りましょう」
「すみません」
「……した」
穏便に説得にしたので、入りなさい。そう言って俺達は病室の中へ背中を押された。ベッドに寝転ぶ松方さんの右大腿に巻かれた包帯を見て、罪悪感が募る。
いくら謝っても謝りきれない。
松方さんに向かって、俺達は深々と頭を下げて謝る。
「プロの殺し屋である以上、君達は責任のある一人前の人間だ。訓練中の過失には君達自身が責任を持つべきです」
顔を上げなさい、と言ってアイツは俺達を見た。
同時に、アイツが背中を支えている松方さんの表情が見える。決して何かを口にする分けでもない。松方さんはただ真っ直ぐ、俺達に視線を向けていた。
「治療費ばかりは烏間先生に払ってもらう外ありませんが、慰謝料と仕事を休む分の損害は、君達が支払いましょう」
「…支払うって、どうやって」
首を傾げた龍之介に対し、アイツは指で松方さんを指す。
「要するにタダ働きです。この人の職場をクラス全員でカンペキに手伝いなさい」
期限は、二週間後まで。松方さんが歩けるようになった時点で、賠償ぶんの働きぶりが認められれば、今回の事は公表しないでくれるそうだ。
突然のことで驚いているだろうに、思慮深い松方さんに頭が上がらない。
そこでようやく、硬く閉じられた松方さんの口が開く。
「……ワシの所は大変だぞ。保育所から学童保育まで手広くやっとる。お前達につとまればいいがな」