元生徒副会長は迎え入れる
「さて、おめーら」
ふらつく堀部を先頭に住宅地の中を歩いていると、竜馬が立ち止まる。突然立ち止まった竜馬を不思議に思っていると、引き攣った笑みを浮かべた竜馬が振り返った。
「どーすっべ、これから」
「……は?」
大成と拓哉の怒声が、静まり返った住宅地に広がる。アレだけ啖呵を切っておいて、まさか何も考えていないとは思わなかった。不意に、二人に捲し立てられている竜馬が、バツが悪そうに俺を見る。
「…天霧、その、なんかねーか」
ああ、成る程な。だから俺にも、ついて来いと言ったワケか。しかし何かないか、と急に言われてもな。歩きながら、堀部の頭部を見る。現在、堀部の頭部には対先生ネットをリメイクしたバンダナが巻かれている。
一時は抑えられているが、いつそれが暴発するか分からない。
「最寄りのレストランはないのか」
「え?あー、それなら俺の家が近いけど」
確か、拓哉の家はラーメン家だったか。丁度いい。一日中暴れまわっていた堀部は、恐らく何も口にしていない。何もかも一度忘れて、空腹を満たす。
考えるのは、それからでいいだろう。
――
「どーよ」
湯気が立つ、出来上がったばかりのラーメンを啜る堀部を見ながら、俺達の分の麺を湯切りする拓哉は自嘲するように笑う。器から伸びる麺がするり、と口元に運ばれると、堀部は無言でラーメンを眺めた。
「……マズイ。おまけに古い」
「だよなぁ。親父に何回も言ってんだけどさ、レシピ改良しやしねぇ」
お待たせ、とカウンターに置かれたラーメンを眺める。匂いからして、出汁は鳥ガラか。トッピングは中心に置かれたナルト一つ。見た目は美味しそうだが。箸を割って、一口啜る。何だ、美味しいじゃないか。
感想を口にすると、堀部にも拓哉達にも心配された。
……何故だ。
「じゃ、次はうち来いよ。こんな化石ラーメンとは比較になんねー現代の技術みせてやっから」
「ンだとォ!?」
器に残った汁を最後まで飲み干して居る間に、次に行く場所が決まったらしい。オラ、行くぞと、大成に背中を叩かれる堀部を見ると、心なしか楽し気に見えた。