元生徒副会長は迎え入れる
あれから、堀部はどこを捜しても見つからなかったらしい。俺達も捜索に加わりたかったが、時間が遅いこともあり家に帰された。
深い溜息を吐き、卓上の前に立つアイツを眺める。
「どーせ、先生は心も体も卑しい生物ですから」
昨夜、晴れて容疑が冤罪だと認められアイツは、生徒に疑いを掛けられていたことにそっぽを向いて、拗ねている。
まあ、或る筈の無い罪を擦り付けられたんだ。
こうなるのも仕方が無い。
「あの触手に危険性はあるのか?」
「ないとは言えません。触手細胞は、人間に植えて使うには危険すぎる。シロさんに梯子を外された今、どう暴走するかわかりません」
こう呑気に話して居る間も、堀部は触手に侵され苦しんでいる。思い出せば、堀部があんなにも強さに拘るのにも何か理由があったのだ。
俺達は、堀部のことを何一つ知らなかった。
――
『椚ヶ丘市内で、携帯電話ショップが破壊される事件が多発しています!!あまりに店内の損傷がはげしいため、警察は――』
律が慌てた様子で映し出した、あるニュース番組。画面上では、女性のリポーターが悲惨な事件現場をバックに原稿を読み上げている。
画面内の映像は、店が大きく損傷し、跡形も無く崩れ去っていた。
「これ、イトナの仕業だよな……?」
「ええ。使い慣れた先生には分かりますが、この破壊は触手でなくてはまず出来ない」
これが危惧していた暴走、か。
携帯ショップばかり破壊する辺り、自我を失ってもなお刻み込まれた苦い思い出によって、行き場の無い感情をぶつけているのだろう。
「……おい」
昨日、何とかすると宣言したアイツを、腕を組みながジっと見る。
「任せなさい。担任として責任を持って彼を止めます。彼を探して保護しなければ」
真っ直ぐ俺を見据えながら、アイツは大きく頷いて答えた。だが、助ける義理は無いと、堀部を助けることに対して皆の反応は悪かった。
まあ、そう考えるのも道理だ。
けれど俺は、何かを訴えかけるような堀部の瞳を見て、決意を固めた。
「俺は行く」
渋っている皆の背後で、俺は静かに席を立ち教室の扉へ向かう。
「待ちなよ、司。放っておいた方が賢明だと思うけど?」
確かに、シロの性格を考えればそうかもしれない。だが弱みに付け込まれ、歳をくっただけの汚い人間に利用された堀部を放っておけるか。
「それでも、俺は行く」