元生徒副会長は迎え入れる



「シロ!これ全部、テメェの計画か!!」
「そういうこと」

 見えないシーツの檻の中で、激しく触手同士がぶつかり合う音がする。寺坂に問い詰められて、白々しく答えるシロに呆れて物も言えない。

 あの犯行は、全てコイツが考えた愚行だったのだ。


「実行は、全て貴方が?」
「いや、今回だけだ。……すまない。烏間さんのさらに上司からの指示で、やりたくないが断れなかった」

 今回だけ、ね。

 となると、アレは全て堀部が行ったと考えるのが一番だ。堀部も触手を持っている。粘液を出すのも、堀部なら容易だったろうな。


「クソッ、俺らの標的だぞ」
「いっつもいやらしいとこから手ェ回して……!!」

 両手を大きく広げ、にっこりとシロが笑みを浮かべて檻の方へ振り返る。


「それが大人ってものさ。そうだ!中の様子が見えないと不安だろう。私の戦術を細かく解説してあげよう」

 俺が知る大人は、自分の行動に責任の持ち、精神的に成熟している人達だ。私利私欲の為に悪行を働き、尻拭いを他人に任せるようなコイツは大人ではない。

 それにしても、コイツは良く喋る。


「このシーツは、対先生繊維の強化布。丈夫で戦車の突進でも破けない」

 聞きたいと一言も口にしていないのに、コイツはペラペラと檻について説明する。今回は、堀部の触手に刃先に対先生物質で出来たグローブを装着しているらしい。

 触手同士がぶつかり合うたび、確かにダメージは与えられる。

 だが、


「甘いな」
「……何?」

 繰り返すだけの、単調な攻撃。アイツの手に掛かれば、二、三回目にすれば順応して見切ることが出来る。アイツの学習速度は、常人の倍だ。

 夏休みのこともあり、アイツは成長を続けている。
 

「な、なんだこのパワーは……!?」
 
 途端、シーツの隙間から凄まじいエネルギーが漏れ出す。布で遮られてアイツが何をしているのかまでは分からない。


「憶えておきなさいイトナ君。先生にとって、暗殺は教育」

 アイツが生み出すエネルギーに、空気が震える。威圧感さえ与える光は、やがて収縮するように小さくなる。

 ―――そして。


「暗殺教室の先生は、教えるたびに強くなる」

 光が、解き放たれる。上空に居る堀部に向けられた、一直線のエネルギー。吹き荒れる強風に、身体が吹き飛ばされそうになる。



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