元生徒副会長は輪に加わる
今日は月に一度の全校集会がある、特別な日だ。
以前まで生徒会であり、俺はステージ裏で待機していることが多くE組になってから改めて実感したが、この場でも差別待遇は酷いモノだった。
E組に向けられる軽蔑した眼差しに、指を指して嘲笑う声。どれもこれも、不愉快極まりない。
「続いて、生徒会からの発表です。生徒会は準備を始めてください」
校長による中身の無い話が終わり、生徒会の発表になる。隣の列では前から順に詳細が印刷されたプリントが後ろへ配られているというのに、E組にはその気配がない。
「はい、今皆さんに配ったプリントが生徒会行事の詳細です」
「え?」
その理由は、プリント自体がE組に配布されていないから。
「…すいません。E組の分まだなんですが」
「え、無い?おかしーな…。ごめんなさーい!3-Eの分忘れた見たい。すいませんけど、全部記憶して帰ってくださーい」
学級委員である磯貝が代表して手を挙げると、ステージ上から荒木が見下すように貶める。たちまち体育館内はE組に対する笑いに満ち、E組の顔が俯いていく。
…実に陰湿で腐敗している。
「――問題ない。続けろ」
「あ、天霧…!」
俺に気付いた荒木は、先程まで掻いていなかった汗を尋常無く垂れ流す。言葉を詰まらせているのか、さっきから母音しかマイクを通していない。
「『え、無い?おかしいな。ごめんなさい。3-Eの分忘れた見たい。すいませんけど、全部記憶して帰ってください』と。…どうした、お前がいったのだろう」
気付けば、あれ程騒がしかった体育館内は静寂していた。反対に、E組の生徒は俯いた顔を上げて俺を見る。
そうだ、それでいい。俺達は同じ人間だ。
虐げられ、劣等感に駆られるのは大間違いだ。
「良く言いました、天霧君。――さて、磯貝君。問題無いようですねぇ」
居ない筈の黄色い生物の声がしたかと思うと、各自の手元に手書きのプリントのコピー用紙が収まる。
「…はい!あ、プリントあるんで続けてくださーい」
「え?嘘、なんで!?あ…いや、ゴホン。――では、続けます」
「さっきの天霧君、かっこよかったね!私、スカッとしちゃった~」
「それは良かった」
旧校舎へ帰る帰路の途中、清々しい笑顔で茅野が言う。その笑顔を前にして俺は考える。そもそも、だ。成績の優劣で物事を決めつけるのなら、あのように他者を虐げ嘲笑う知性の無い人間はどうなる?
それこそ常識のない、教育不足である只の劣等生に違いない。
人間の本質は変わらない。その過程において人格が形成され、己が産まれる。そこで間違った彼等は、その時点で敗北しているのだ。