2020年が明けて、麻由美ちゃんと一緒にカフェバーに住み込んでいた百合子がアパートを借りて2人暮らしをすると聞いた時、俺は堪らずこう言った。

「鈴原の家の百合子さんになってよ」

　引っ越しに伴う作業中の、カフェバーの2階の住居部分の一室でのことだ。

ロマンティストの俺にしては貴重なことにロマンの欠片も無かったが、俺としては真剣に考えた末のプロポーズだった。

「だんだん。お気持ちは受け取るわ」

　そう言って、百合子は作業に戻った。

諦めの悪い俺は、2人の新居に度々足を運んで麻由美ちゃんの遊び相手になった。

俺は血の繋がらない娘を持つことになる。

そしていつかは、血の繋がった子どもも同じように愛して育ててゆく。

月日を重ねる度に、決意は固まっていった。