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セレスティナとエミ

 巧みな話術で、彼女の出勤日はいつにも増して大盛況だった。

麻由美は、翌年から区立幼稚園に通い始めた。

家庭環境のせいか保育料が一部免除されたと彼女は喜んでいた。

高田馬場にいた頃から密かにやっていた在宅ワークでの収入と、『ゆき』に通勤するようになったことで収入ができたことと、辛うじて残っていた貯蓄を足せば生計が成り立つ見通しがついたようで、夏に幼稚園近く──山手線でいえば、駒込駅にも田端駅にも出られるような土地のアパートを借りて念願の二人暮らしを始めた。

小橋さんの取りなしで実家の両親──特に父親との和解が成立したと聞いた。

 一方、僕も父子家庭ということで区立保育園の入園が優先され、麻由美が幼稚園に入園した次の春からエミを保育園に通わせている。

翌月に3歳の誕生日を迎えた彼女にパパと呼ばれる生活も、なかなか悪くない。

しかし、居間に置いているマリちゃんの写真を指しては「誰?」と聞き、それはママだと答えてもまだ合点がいかないようだ。

いつか理解する日が来ることだろう。

日々成長してゆくエミの姿を、マリちゃんはどこかで追いかけていると信じたい。
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