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「柿を獲ってきたから、剥いてくれ」

 9月の終わり、10月が近い頃だった。

庭にある柿の大木から奕が実を2つ3つもいできて、老女が剥いてきた。

妻は食事が殆ど喉を通らぬ衰弱ぶりで、噛み砕いてらんのようにしなければ飲み込めない様子だった。

明くる日、遂に会話さえも儘ならなくなった。

目を閉じて、4半刻ほどで開け、何を見ていたのだろう。

奕が手習いの文字を見せても、瞳が揺らいで口角を上げるだけだった。
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