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杏①

 仕え始めて2年ほどで嫁がれるのに従って、わたしも共に新居のある穎川えいせんに参りました。

わたしより10歳年上なので当時20歳、もう少しすれば行き遅れてしまうようなお年であられました。

結婚相手のかく奉孝ほうこうさまはお嬢さまより2歳年上で、元々のお家は潁川で5本の指には入らないが10本の指には上るほどの名家で、法に詳しい家系だそうですが、郭奉孝さまに関しては傍流の傍流のお生まれで、ご両親を早くに亡くし、はっきりした後ろ楯が無いために仕官せずに隠居のような暮らしをされていました。

将来の自立を目指して物書きで生計を立て、数多の見合い相手の結婚への意欲を削がせていたお嬢さまを見初めた方なので、20年近くが経った今でもわたしは郭奉孝さまは風変わりな方だと思っております。
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