杏②
年が明けて建安6年になりました。
早々に曹将軍が黄河まで軍を率いて行かれるというので郭奉孝さまの従軍が決まったのです。
「奉孝さま、どうか行かないで。家にいてくださいな」
龐家にいた頃から『来る者拒まず、去る者追わず』を徹底されているお嬢さまが不自然なほどにご主人を引き留めておられたのが印象に残っています。
元来情緒が安定しない方ではありませんし、まして人前で取り乱される方でもありません。
寧ろ、笑顔で送り出されるような方でした。
「たまにはかわいいことを言うじゃないか。しかしね、美帆。殿が行かれる所には行かねばならないのだよ」
「でも、それであなたに万一のことがあったら仕方ないじゃない!」
「なに、心配には及ばないさ。私の留守の間、君は家と奕を守ってくれ」
「家と奕を守っても、あなたがお元気でいなければ意味がないじゃありませんか、奉孝さま!」
「美帆。軍師という者は、他に大事な物を抱えていても、それを差し置いて苛酷な戦を戦いたいものなのだよ」
早々に曹将軍が黄河まで軍を率いて行かれるというので郭奉孝さまの従軍が決まったのです。
「奉孝さま、どうか行かないで。家にいてくださいな」
龐家にいた頃から『来る者拒まず、去る者追わず』を徹底されているお嬢さまが不自然なほどにご主人を引き留めておられたのが印象に残っています。
元来情緒が安定しない方ではありませんし、まして人前で取り乱される方でもありません。
寧ろ、笑顔で送り出されるような方でした。
「たまにはかわいいことを言うじゃないか。しかしね、美帆。殿が行かれる所には行かねばならないのだよ」
「でも、それであなたに万一のことがあったら仕方ないじゃない!」
「なに、心配には及ばないさ。私の留守の間、君は家と奕を守ってくれ」
「家と奕を守っても、あなたがお元気でいなければ意味がないじゃありませんか、奉孝さま!」
「美帆。軍師という者は、他に大事な物を抱えていても、それを差し置いて苛酷な戦を戦いたいものなのだよ」