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杏②

 6歳の若さまは、物心ついてから月に10日も帰ることのないお父さまのお顔をお忘れになっておられたのです。

お嬢さまの裾を掴み、纏わりついて離れなくなってしまったのです。

「奕ちゃん、お父上ですよ。怖がらないで出てきなさい」

「いやだ! 母上が喰われてしまう!」

「誰もとって喰われやしないわよ」

「母上が父上を喰うなら分かるが、私が美帆を喰うだなんて、心外だね」

 お嬢さまは鬼のような顔を持っている、という噂は襄陽でも潁川でも聞いた噂でした。

一方の郭奉孝さまは漢人らしい外見で、色が白かったので遊女たちからの人気もあったそうです。

思えば冀州からお戻りになった時、両目が潤み、少しお痩せになっていたのが気になりました。
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