「杏はいい奥さんになるわ。どこかにふさわしい殿方はいないかしら」

　お嬢さまはわたしが15歳になると、すぐに結婚を薦めるようになりました。

ご自分の結婚には全くご興味を示さなかったのに、どうした風の吹き回しでしょうか。

いつしか「20歳までは嫁ぎません」というのがわたしの口癖になっていました。

「それでは、私とまるっきり同じ年になってしまうじゃないの」

「お言葉ですがお嬢さま、わたしはただ今19でございます。お嬢さまは19歳の頃、縁談がお決まりでございましたでしょうか？」

「いいえ。鬼だ変人だと言って、縁談を持ってきた皆さんは逃げ帰っていたわ」