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露わけ衣

「ごきげんよう、行って参ります」

 風呂敷包みを手に、50分の道を毎朝歩いて通った。

病気のため高等女学校2年を1年留年したが、それ以外は欠かさなかった。

 高等女学校5年を6年かけて卒業した。

休学明けの2年次から華道、3年次から和歌、5年次から英語を習い始めた。

当初はボートサルというアメリカ人だったが、2年目はページという講師に変わり、3年目は日本人女性のみになった。

女学校を卒業後は、茶道や日本画も習い事に含まれるようになった。

 茶道、華道、和歌、日本画、英語。

社交界では英語かフランス語を話せなければいけないので、上流階級の花嫁修業としては至って典型的なものである。

女学校でも英語の講義があり、必死になって英単語の暗記に励んだが、それだけでは足りないらしい。

学校では文法が重視されるので、教養となると別の世界の話だ。

それでも、英会話の稽古が楽しくないと思ったことは無かった。
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