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露わけ衣

 京都で独り暮らしをしている母は上京することが多かったが、その時は必ずと言ってよいほど鎌倉にも足を運んでいた。

彼女の結婚の前年に嫁いできた兄嫁が結婚2年目と3年目に続けて出産したので、兄になる自覚を持たぬまま妹が産まれた甥を連れてきたこともあった。

「かわいいわ、かわいいわ。お兄さまが『僕の大事な秘蔵っ子ちゃん』なんてお呼びになるお気持ちも分かるわ」

「母はそろそろ外孫も見たいけれど…」

「あら、外孫ならお姉さまのところに3人もいらっしゃるでしょう」

「何を暢気なことを! 早く跡継ぎをお産みになって安心させなさいな」

「そうね、でも、そればっかりは何とも言えませんわ」

 口ではうまくはぐらかす彼女だったが、夫婦の仲が睦まじければ子どもができるのも道理で、結婚から1年経つ頃──つまり、兄の2人目の子どもが産まれる頃に妊娠が判明した。

年明け早々には出産だろう、という医師の見解だった。

初めての子どもなので夫の喜びもひとしお、東京の姑からは跡継ぎが産まれるということで祝いの品を贈られ、京都にいる母は孫が3年続けて産まれるので再び上京して鎌倉に長期滞在することにするようだった。
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